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2014年02月15日号のバックナンバー
フォーカス
民家のガンバリと力強さ──「日本の民家一九五五年──二川幸夫・建築写真の原点」レビュー
[2014年02月15日号(飯沢耕太郎)]
1954年代前半、早稲田大学文学部に在学して美術史を学んでいた二川幸夫(1932~2013)は、建築史の教授だった田辺泰に、帰省の途中で飛騨・高山の民家、日下部礼一家を見るように勧められた。それが、将来は建築家になろうと考えていた一人の若者の運命を変えることになる。名大工、川尻治助による旧家の、美しく、堂々たるたたずまいを目にしたことで、彼の中に日本の民家をつぶさに見てみたいという強い欲求が生じてきたのだ。それから5年あまりをかけて、二川は東北から九州まで全国各地を行脚し、民家の内部空間とそれを取り巻く環境全体を克明にカメラにおさめていった。
キュレーターズノート
ファン・デ・ナゴヤ美術展2014「虹の麓」、「島袋道浩:能登」
[2014年02月15日号(鷲田めるろ)]
この1月、ナゴヤドームに隣接する名古屋市民ギャラリー矢田において、金沢の若手作家8人のグループ展「虹の麓」が開催された。名古屋市文化振興事業団が毎年企画を公募する「ファン・デ・ナゴヤ美術展」として実現する展覧会で、作家はいずれも1980年代以降生まれ、金沢美術工芸大学を卒業、もしくは在学中である。
「想像しなおし IN SEARCH OF CRITICAL IMAGINATION」、「上田宇三郎展──もうひとつの時間へ」
[2014年02月15日号(山口洋三)]
年初から、福岡市美術館では「想像しなおし」「上田宇三郎展」「茶の湯交遊録」と三つの企画展が重なり、1〜2月はイベント、関連事業がほぼ毎週末開催された。特別企画展だけでなく常設展示室でも企画展を行なう当館ならではの現象なのだが、今回私はその中心にいない。新人のころをのぞけば、筆者にとってこれは初めての体験だ。ここでは、近・現代美術の内容を持つ二つの展覧会をレビューしたい。
トピックス
篠原有司男のエネルギー──ドースキー展とパルコ展を解題する
[2014年02月15日号(富井玲子)]
一昨年の『篠原ポップス!前衛の道、東京/ニューヨーク』展、そして昨年12月の篠原有司男・篠原乃り子二人展『Love Is A Roar-r-r-r! In Tokyo 愛の雄叫び東京篇』と続けて篠原有司男の展覧会を企画した。
デジタルアーカイブスタディ
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 太下義之氏に聞く:2014年はデジタルアーカイブ元年──誕生20年目の拠点と法律
[2014年02月15日号(影山幸一)]
デジタルアーカイブという言葉が誕生したのは、1990年代半ばであった。当初その概念は「有形・無形の文化資産をデジタル情報の形で記録、その情報をデータベース化して保管、随時閲覧・鑑賞、情報ネットワークを利用して情報発信」として、広く日本で羽ばたいた言葉だった。あの年から約20年、「2014年は“デジタルアーカイブ元年”と後々呼ばれることになるかもしれない」という刺激的な言葉に出会った。発言していたのは、民間のシンクタンクで文化政策を専門としている太下義之(おおしたよしゆき。以下、太下氏)氏であった。その広い領域の文化のなかでも特に美術や演劇への関心は高く、アートシーンや美術館評価、また企業メセナ、創造都市にも詳しく、実物を見る目を養ってきた感性豊かな研究者である。
2014年のデジタルアーカイブの展望を 1.文化政策とデジタルアーカイブ、2.東アジア文化都市と創造都市、3.デジタルアーカイブ振興法(仮称、以下同)と国立デジタル文化情報保存センター(仮称、以下同)という三つのテーマを軸に話を伺った。