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MORI channel|水戸芸術館現代美術センター学芸員・森司によるブログ。学芸員の日常や最新のアートニュースを伝えます。
2005.10.30

青森・24(トゥエンティーフォー)

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昨夜は着いた時点でもう、薄暗かったので、完成した青森県立美術館の外観は、今日はじめて見る。外装は、白く塗られた手積み煉瓦で覆われている。煉瓦色のままの部分は南側屋外ヤード(トレンチの浮島)分部に設営された奈良美智作品が展示される「八角堂」。写真を写している人物と比較すると、そのスケール感がわかる。


青森県立美術館の建築物としての印象は、帰りの便の席が隣同士だった青木淳さんに直接話す。まとまった感想を文字にするには、ちょっと間がいる。まだ咀嚼仕切れていない。丹念に施設見学すると、3時間で一巡しかできないだけの広さがある。案内してくれた所員君らの「何処見てるかな?気がつくかなチェック!」は、ほぼ満点で通過したようで、個人的にはしっかり見ることができてなによりと思っている。でも、まだ足らない。最初は純粋に対象物として(青木さん)の建物──それを通して青木さんの思考や意図──を見ているのだけど、段々と使う側・管理する側の意識や視点で見始めて(問題が自分のことになってしまっていて)ゲームオーバー。本当に久しぶりにハードな空間を見ました。内部はこんな感じで壁が浮いていたり白壁と土壁が混じり合ったり。堪能しました。見かけのシンプルさがいわゆる幼稚な単純さからのものではなく、まさに大人の熟慮の結果の整理の賜。空間のポテンシャルを最大限に引き出したり使いこなすためには、新しいアプローチ(空間攻略法)を組み立てないといけないかも。まぁ、すべてが初めての経験。たぶん誰にとってもではないだろうか。それは青木さんにとっても。だから、本当に新しい美術館(空間)なのだと思う。竣工直後の真新しさではなくて。

美術館の周りはまだ整備中で、敷地全体の完成はもうしばらく先
開館は2006月7月13日(木)。その場に居たので三村知事出席のフォーラム後のプレス発表も聞いた。新しい美術館の新しい運営方針のお披露目はまだ無かった。


洒落の効いた一幕は、奈良美智作品の命名式。本人からコミッションワーク作品の発表があった。作品名は「あおもり犬」。壇上での本人の弁によるとこれは「秋田犬」とか「土佐犬」とか同じレベルでの命名。愛称は広く公募して決めたい(詳細未定)とのこと。良い味のプレゼンでした。
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コミッションワークの場所は、アレコホールのあるB2レベル。トレンチ(土の壁)に囲われている奈良美智作「あおもり犬」。高さ8.5メートル。


アレコホールは、4層吹き抜け。縦横21メートル、高さ19.5メートル。体感的には正方形のホワイトキューブ。ただしここの床は、三和土(タタキ)。幅14メートル、高さ9メートルのマルク・シャガールアレコ作、バレエ「アレコ」の舞台背景画(1942年作)3点—第1幕「アレコとゼムフィラ」、第2幕「カーニバル」、第4幕「サンクト・ペテルブルグの幻想」—が常設展示される場所。だからアレコホール。*ちなみに残りの第3幕はフィラデルフィア美術館の蔵品。
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アレコホールの壁面の一つがすり下がる。下から見上げると「シアター」空間が姿を現す。


菊池敦己(きくちあつき)氏デザインのシンボールマーク。イメージからは空の「青」。
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青森滞在中の24時間は密度濃く、県美以外の訪問ネタでは先ずはACAC。「秋のアーティスト・イン・レジデンス展—かわりゆく世界で」(10月29日から11月20日)。写真は、ACACのギャラリーAでの展示風景。こちらの設計は安藤忠雄。運営は青森市。
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中西信洋作品<レイヤー・ドローイング>。
これが凄く良い。100枚を一組とした作品で、雲の動く風景を定点で撮影した風景と、森の中を数歩ずつ歩きながら撮影した風景。時間と空間がきれいに作品化されていた。


それ以外にも、空間実験室にももちろん寄ったし、竣工記念シンポジウムにももちろん参加し聴講したし、美味しいものも食べたし、お湯にも浸かったし、長谷川孝治氏とも飲んだし、日沼夫妻にもお世話になった。いつもの一泊二日のありがちな青森滞在だったけど、はじめて青森駅前市場での朝ご飯体験もあったり、新しい発見や動きも見られた。まさに「24」でした。

Posted by 森司 at 01:49 | 訪問記











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