昨夜は着いた時点でもう、薄暗かったので、完成した青森県立美術館の外観は、今日はじめて見る。外装は、白く塗られた手積み煉瓦で覆われている。煉瓦色のままの部分は南側屋外ヤード(トレンチの浮島)分部に設営された奈良美智作品が展示される「八角堂」。写真を写している人物と比較すると、そのスケール感がわかる。
青森県立美術館の建築物としての印象は、帰りの便の席が隣同士だった青木淳さんに直接話す。まとまった感想を文字にするには、ちょっと間がいる。まだ咀嚼仕切れていない。丹念に施設見学すると、3時間で一巡しかできないだけの広さがある。案内してくれた所員君らの「何処見てるかな?気がつくかなチェック!」は、ほぼ満点で通過したようで、個人的にはしっかり見ることができてなによりと思っている。でも、まだ足らない。最初は純粋に対象物として(青木さん)の建物──それを通して青木さんの思考や意図──を見ているのだけど、段々と使う側・管理する側の意識や視点で見始めて(問題が自分のことになってしまっていて)ゲームオーバー。本当に久しぶりにハードな空間を見ました。内部はこんな感じで、壁が浮いていたり、白壁と土壁が混じり合ったり。堪能しました。見かけのシンプルさがいわゆる幼稚な単純さからのものではなく、まさに大人の熟慮の結果の整理の賜。空間のポテンシャルを最大限に引き出したり使いこなすためには、新しいアプローチ(空間攻略法)を組み立てないといけないかも。まぁ、すべてが初めての経験。たぶん誰にとってもではないだろうか。それは青木さんにとっても。だから、本当に新しい美術館(空間)なのだと思う。竣工直後の真新しさではなくて。
美術館の周りはまだ整備中で、敷地全体の完成はもうしばらく先。
開館は2006月7月13日(木)。その場に居たので三村知事出席のフォーラム後のプレス発表も聞いた。新しい美術館の新しい運営方針のお披露目はまだ無かった。
洒落の効いた一幕は、奈良美智作品の命名式。本人からコミッションワーク作品の発表があった。作品名は「あおもり犬」。壇上での本人の弁によるとこれは「秋田犬」とか「土佐犬」とか同じレベルでの命名。愛称は広く公募して決めたい(詳細未定)とのこと。良い味のプレゼンでした。
コミッションワークの場所は、アレコホールのあるB2レベル。トレンチ(土の壁)に囲われている奈良美智作「あおもり犬」。高さ8.5メートル。
アレコホールは、4層吹き抜け。縦横21メートル、高さ19.5メートル。体感的には正方形のホワイトキューブ。ただしここの床は、三和土(タタキ)。幅14メートル、高さ9メートルのマルク・シャガールアレコ作、バレエ「アレコ」の舞台背景画(1942年作)3点—第1幕「アレコとゼムフィラ」、第2幕「カーニバル」、第4幕「サンクト・ペテルブルグの幻想」—が常設展示される場所。だからアレコホール。*ちなみに残りの第3幕はフィラデルフィア美術館の蔵品。
アレコホールの壁面の一つがすり下がる。下から見上げると「シアター」空間が姿を現す。
菊池敦己(きくちあつき)氏デザインのシンボールマーク。イメージからは空の「青」。
青森滞在中の24時間は密度濃く、県美以外の訪問ネタでは先ずはACAC。「秋のアーティスト・イン・レジデンス展—かわりゆく世界で」(10月29日から11月20日)。写真は、ACACのギャラリーAでの展示風景。こちらの設計は安藤忠雄。運営は青森市。
中西信洋作品<レイヤー・ドローイング>。
これが凄く良い。100枚を一組とした作品で、雲の動く風景を定点で撮影した風景と、森の中を数歩ずつ歩きながら撮影した風景。時間と空間がきれいに作品化されていた。
それ以外にも、空間実験室にももちろん寄ったし、竣工記念シンポジウムにももちろん参加し聴講したし、美味しいものも食べたし、お湯にも浸かったし、長谷川孝治氏とも飲んだし、日沼夫妻にもお世話になった。いつもの一泊二日のありがちな青森滞在だったけど、はじめて青森駅前市場での朝ご飯体験もあったり、新しい発見や動きも見られた。まさに「24」でした。