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MORI channel|水戸芸術館現代美術センター学芸員・森司によるブログ。学芸員の日常や最新のアートニュースを伝えます。
2005.11.24

デュシャン

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今日も晴れていた記録として。


締め切り迫る原稿を抱えていて——今日もこれから1本、仕上げないとならない(^L^;)——かなり内心焦っている。明日から3日間はロードの人となり、夜も使えなくなることも、慌てている一因だけど、何と言ってもすべからく年末進行なのです。


予定変更可能なものは移動させてしまうかも知れないけれど、今のところ組んでいる明日からの予定はこんな具合。
25日は、「さわひらき展」(−26日まで)のオオタファインアーツの営業開始が11時だから、まずは朝一で10時オープンの森美術館で「杉本博司」展を見ることからスタート。
前にも書いたけど同氏著書「苔のむすまで」(新潮社)には、一気に読み進ませる力ある魅力的な章が並ぶ。それは、世界を宇宙を理解したいとする衝動を、「時間」と言う尺度できっちり捕らえきった杉本博司的解釈を内包した、甘えたところのない自律した言葉(=熟慮し吟味された言葉)の魅力とも言えるかもしれない。

各テキストは、記憶であったり何らかの引用だったりと、常に「時間」を纏う話しを芯にした構成の章が並ぶが、その一つとして『大ガラスが与えられたとせよ』が収録されている。
自らデュシャンピアンと公言する杉本博司氏のパリ、カルティエ財団美術館での2004年個展の開催の経緯が、構築的な言葉の配列で記述されている。


杉本氏の話は、東京大学にある「大ガラス」のエピソードを軸に展開する。その「大ガラス」制作の陣頭指揮をとっていた一人が過日亡くなった東野芳明氏である。実は、僕にとって東野芳明は、美術批評家として60年代に「反芸術」の言葉を産んだ人としてよりも、デュシャンの(学術)研究者として、そしてその精神の実践者として記憶されている。

ちょうど著書「デュシャン」を刊行したばかりの東野先生に、「次は何ですか?」と、今思えばお馬鹿な質問をしたとおもうのだが、聞いたことを思い出す。そのとき口にされた作家の記述を僕は見てはいない。けれどデュシャンのように人知れず密かに準備していていたのだろうと思うことにしている。


明日の杉本博司展の会場での時間は少しだけ長くし、静かな時の記憶の記述を見てみようと思う。そのあとでは忙しいくのは分っているけど、ムリして日本橋三越本店新館7階での「山口晃」展(−27日まで)に寄れたら(なぁ)。すくなくとも両日のどこかで時間を見つけよう。

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R.MUTTと便器にサインし、レディメイド作品「泉」を発表した1917年のニューヨークのデュシャンをジャッケトにするCD。本人がしゃべるインタビュー(1959年)他を収録している。(2000円。)


午後2時過ぎにはスパイラルでの「メセナ大賞受賞式」に行く(べきだろうな)。ARTSCAPEが「アート情報文化賞」を受賞した。レセプション会場で、久しぶりに新しく担当になられている各企業のメセナ担当者の方々を紹介してもらい、ご挨拶しておこう。水戸の企画展への協賛をお願いするために。


少し休んで横浜に向かうかな。BankARTスクール「続・美術館はどこにいく」が19時30分から。そうそうたる受講生リストが過日メールで送られて来ていた。がんばらないと。映像の用意はできているから、どこかで話しの組み立てを決めないと。ヒャー。21時30分までの講義が終わった後は、慌てて戻るにしても中途半端な時間。覚悟をきめて自主的交流会の後、「BankART Life—24時間のホスピタリティー」をまさに体験するべく、会場内の宿泊施設にお世話になる。特約している銭湯もあるらしく、それなりに楽しみ。翌日は9時30分から、12月10−11日に開催する [art×book fair]のためのトークショー(12月10日19時30分から)の関係者打ち合わせ。


26日は横浜から渋谷に移動し、午後からヒビノスペシャルでリトルモアから刊行予定の「日比野克彦の一人万博」本の制作チームの打ち合わせに参加。夜、取手に移動し、藤浩志ツアーのミッドナイト・トークにジョインする。何時までするのだろう?と言うわけでこの日は取手泊ということになるのだな。


27日は11時までに府中に移動し、東野芳明氏ご葬儀に参列。その後は三鷹市美術ギャラリーに寄り「絵画の湯」展を見るとして、夕方までには再び取手に戻り、TAP2005クロージングイベント&打ち合わせに参加するつもり。なんとも長い3日間になりそう。一端、仕切直しのために帰宅するも28日も朝から終日都内で打ち合わせ。ふ〜。


ふむ〜、時間がない。PC持ち歩きの巻きになるのかな。
ま、予定を組み上げてしまえば、あとは迷わず、それに従って行動するのみ。書き上げ予定の原稿1本と25日の講座の準備をするのが今日の自宅での必須ワーク。(「24」は当分お預け。「シーズン I」 は完了し、やっと話しの流れが見えてきました。なるほどねー。)

「大ガラス」の制作にも関わったが岩佐鉄男氏が小林康夫氏とともに訳した「デュシャンは語る」(1999 ちくま学芸文庫)は、1967年に刊行されたピエール・カバンヌ著「マルセル・デュシャンとの対話」の翻訳本。1968年10月2日ヌイイーのアトリエで死去しているから最晩年のインタビューということになる。それだけでも貴重。

Posted by 森司 at 20:37 | 雑記帳

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トラックバック時刻: 2006年01月10日 16:16











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