中川一政(1893-1991、文化勲章受章者)は生涯に800点以上の〈薔薇〉作品を描いていますが、画家自身「一つとして同じ薔薇はない」と語っています。随筆には「画かきの勉強とは自分が日々新しく記録をつくってゆくことである。昨日より今日、今日より明日と何らかの意味で前進してゆくことである。」(「孤独」『見えない世界』1954年/筑摩書房)とも記しています。
一政も関東大震災や戦争を経験した一人ですが、常に明日を見つめ、一歩一歩確かな歩みを重ねました。まさに「昨日より今日、今日より明日」の気概で新たな作品を生み出し続け、97年の生涯を現役で全うしたのです。こうした生き様は、今の困難な時代を生きる私たちに、前を向いて歩んでいく勇気を与えてくれるかもしれません。
本展で、こうした画家の姿勢に作品や言葉をとおして触れてみませんか。