今日、日本を代表する伝統的な文化・芸術の一つとして美術館や博物館で展示されている浮世絵。その多くは絵師・彫師・摺師の分業制で量産された多色摺木版画(錦絵)であり、江戸時代においてはメディア媒体に近いものでした。人気の歌舞伎役者を取り上げる「役者絵」や美しい着物をまとった女性を描く「美人画」は、現代のブロマイドやファッション雑誌といえるでしょう。
浮世絵は世相や流行に敏感な江戸っ子たちのニーズに応え、江戸時代の「今」を鮮明に伝えました。また、繊細な彫りや摺りの技術を駆使し、手に取って眺めるからこそ楽しめる工夫が施されています。本展では、浮世絵に表された多彩なジャンルを俯瞰しながら、鑑賞の楽しみ方をご紹介します。