この度、ハギワラプロジェクツでは、2024年7月31日(水)より、額田宣彦の個展「往来」を開催いたします。当画廊では6年ぶりの個展となります。
額田は1990年代より、多くの美術館やギャラリーの展覧会に参加し、作品を発表してきました。1990年代半ばにはジャングルジムのような格子を描くスタイルを確立し、現在は均一に下地を塗った麻布に、マスキングテープなどを使わず、フリーハンドで麻布の目に沿ってラインを描く手法に至っています。
本展では、「布目に沿ってラインを描く」というプロセスから生まれた作品群から、「横線」、「点」、「斜平行線」、「斜線」、「三角形」、「ジャングルジム」シリーズの作品を展示いたします。これにより、前回の「斜線」シリーズとの違いや、新たなアプローチを提示します。
制作プロセスにおいて一定の手順を守ることで、作家の恣意的な判断や相対的な評価を減らし、作家が言う「その絵画自体が根拠として、その絵画を成り立たせている絵画」を生み出しています。そのシンプルで潔い緊張感と、淡々とした時間の痕跡が同時に存在する作品は、画面に描かれているものを読み取るという視点ではなく、私たちの選択や価値基準について問いかける自由を提供します。この問いかけを通じて、人間の奥底にある普遍的な感性と知覚に訴えかけ、鑑賞者との豊かな対話を促すことを目指しています。

アーティストステートメント

1990年代「ジャングル・ジム」シリーズ以降、様々なシリーズが作り出された。2010年以降は「布目に沿ってラインを描く」というプロセスが加わった。これまで、各シリーズを非階層的、横断的、断片的に展開させ、美と絵画の「往来関係」を提示してきた。例えば、「布目に沿ってラインを描く」「既成の絵具や木枠を使用する」などのアプローチは、「型」と「形」の関係のように、不可視領域と可視領域の往来関係から導き出されている。「型」は「美」の在り様と同じように、それ自体を顕すことがない「形跡」のようなものである。一方、形である「絵画」はそれ自体が根拠となりうるものである。

2024年5月 額田宣彦

[作家略歴]
額田 宣彦(ぬかた のぶひこ) 1963 年大阪府生まれ、愛知県在住。1990 年愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了。主な展覧会に、「ひらいて、むすんで」岡崎市美術博物館(2024, 愛知)、「GROUND3 絵画のふつうーふつうの絵画」アートラボ愛知 (2023, 愛知)、「F.P.M.S.」HAGIWARA PROJECTS(2018, 東京)、「GROUND2」 武蔵野美術⼤学美術館, (2016, 東京)、「蜘蛛の糸」豊田市美術館(2016, 愛知)、「GROUND2」武蔵野美術大学美術館(2016, 東京)、「MOTコレクション特別企画 クロニクル1995-」東京都現代美術館(2014, 東京)、「寺田コレクションの若手作家たち」 東京オペラシティアートギャラリー(2011, 東京)、「暗順応」 ギャルリー東京ユマニテ(2010, 東京)、「放課後の原っぱ-櫃田伸也とその教え子たち-」 愛知県美術館、名古屋市美術館(2009, 愛知)、「キュレーターの視点-〈点〉と〈網〉」 埼玉県立近代美術館(2005, 埼玉)、ギャラリーNWハウス(1997, 東京)、水戸芸術館現代美術センタークリテリオム(1997, 茨城)など。