アレック・ソス(1969-、アメリカ・ミネソタ州生まれ)は、国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした、写真で物語を紡ぎだすような作品で、世界的に高い評価を受けてきました。
本展「部屋についての部屋(A Room of Rooms)」には、初めて出版されたシリーズであり、初期を代表する〈Sleeping by the Mississippi〉から、今秋刊行予定の最新作〈Advice for Young Artists〉まで出品されます。30年に及ぶソスの歩みを単に振り返るのではなく、選ばれた出品作品のほぼすべてが屋内で撮影されているように、「部屋」をテーマにこれまでのソスの作品を編み直す、当館独自の試みとなります。
出品作品のひとつに〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉というシリーズがあります。アメリカの詩人、ウォレス・スティーヴンズ(1879-1955)の詩「灰色の部屋(Gray Room)」の一節からタイトルがとられた本作は、2019年に同名の写真集としてまとめられ、ソスのキャリアにおいてひとつの転換点となっています。初期からソスはアメリカ国内を車で旅し、風景や出会った人々を大判カメラで撮影してきましたが、本作ではそうしたロードトリップのスタイルではなく、舞踏家・振付家のアンナ・ハルプリン(1920-2021)や、小説家のハニヤ・ヤナギハラ(1974-)など世界各地にさまざまな人々を訪ね、その人が日々を過ごす部屋の中で、ポートレイトや個人的な持ち物を撮影しています。すなわち、部屋とそこに暮らす人をテーマとするこのシリーズが、本展を生み出すきっかけとなりました。[美術館サイトより]