誰も見たことのなかった色合いをこの世界に生み出す。
それは芸術家の見果てぬ夢に違いありません。
2 0 世紀後半、浜口陽三は、銅版画によって成し遂げました。
それは闇から浮かぶ、柔らかな色彩でした。
この展覧会では、浜口陽三の銅版画と共に、
その色を生む技法について映像と刷りの体験で紹介します。
現実の世界にはありそうでない色を、ゆっくりとご覧ください。

展覧会アドバイス:中林 忠良(東京藝術大学名誉教授)


【カラーメゾチント】
メゾチントは17世紀にオランダで発明された印刷技術。黒の濃淡を彫り加減で表現
します。カラーメゾチントは、黄、赤、青、黒のメゾチントによる版を作り、刷り重ねて作る方法。最小限の色数で、すべての色彩を、やわらかな質感で表現します。

【浜口 陽三】
1 9 0 9 年和歌山県生まれ。1 9 3 0 年、東京美術学校の彫塑科を2 年で中退し、
フランスに渡る。第二次世界大戦勃発により帰国する1939年秋まで、現地で油彩、
水彩、版画を制作。1950年頃から東京で銅版画に本格的に取り組み、1953年
に再びパリに赴く。1955年頃、銅版画の新しい技法、カラーメゾチントを開拓し、
その技法を使った作品により、国際コンクールで次々と受賞歴を重ねて活躍。
1981年サンフランシスコに移住し1996年に帰国。2000年逝去。