本展覧会では、デュッセルドルフ在住のグラフィックデザイナー、グラフィックデザイン研究者・大学教授であるイェンス・ミュラー氏が設立した「A5コレクション・デュッセルドルフ」を日本で初めて紹介します。戦後西ドイツのグラフィックデザイン資料を中心に収集され、ポスターだけで1,000点以上、その他資料類は10,000点を超える規模に成長した本コレクションは、戦後の分断から1990年ドイツ統一までのグラフィック表現を探る上で非常に重要なものです。
戦前のドイツではバウハウス(1919~33年)がモダンデザインの思想と教育を世界に示し、戦後の西ドイツではその理念を継承するウルム造形大学が1953年に開設されました。第二次世界大戦後、アメリカのデザインがもてはやされる中、ドイツではモダニズムの思想を受け継ぎながら、デザインと科学・哲学・社会思想などとの接点を探る、デザインの理論と実践を発展させていきました。
1950年代末、西ドイツのGNPは世界第2位に躍進し「経済の奇跡」と呼ばれましたが、その背景にはドイツ特有のデザインシステムが関与したことが考えられます。世界で最も古い歴史を持つセーリング・フェスティバル「キールウィーク」、1972年のミュンヘンオリンピック、カッセルで5年に一度開催される現代美術展「ドクメンタ」などスポーツや文化における国家的イベントのイメージを形成する上でも、グラフィックデザインは大きな役割を果たしました。本展ではポスター約130点、その他冊子、雑誌などグラフィック関係の小品約250点で、戦後西ドイツにおけるグラフィック表現の魅力に迫ります。[美術館サイトより]