『四十雀』(ピエール・ド・タルタス 1963年刊行)は、フランスの文化人ジャン・コクトーのテキストに藤田のリトグラフ21点を組み合わせたエディション番号付きの限定本です。深い友情で結ばれた二人の合作は、1936年にコクトーが日本を旅した時のことを綴った『海龍』(ジョルジュ・ギヨ社 1955年刊行)に続いて二作目となります。フランスの伝統的な職業や風俗などにちなんで子どもたちが描かれたこの作品のタイトルは『四十雀』。四十雀は自由・解放・希望を象徴する鳥といわれていますが、コクトーは学生運動へと発展していく当時の世相を反映してこのタイトルをつけたのかもしれません。またコクトーは序文のなかで「ルイス・キャロルと同じく、どうやらフジタは大人たちの考えを変える鏡像を子どもの世界に探し求めているようだ」とも述べています。フランスの日常的風景とともに描かれたかわいらしい子どもたち。そこにはどのような意味が込められたのでしょうか。