三代歌川豊国(初代国貞、1786-1864)と歌川国芳(1797-1861)は、広重と共に「歌川派三羽烏」と称され、江戸末期の浮世絵界を大いにけん引した絵師です。二人は初代歌川豊国を師とする兄弟弟子でしたが、三代豊国は歌舞伎役者を緻密に写した役者絵を、国芳は大胆な構図と躍動感のある身体表現が魅力の武者絵を得意とし、それぞれの分野で活躍しました。
本展では、嘉永5年(1852)に刊行された三代豊国「木曽六十九駅」と国芳「木曽街道六十九次之内」を同時に公開します。両シリーズとも、説話や小説、歌舞伎演目などの登場人物を画面の主役としており、各宿場と人物のつながりを読み解く楽しさがあります。また、その多彩な内容からは、庶民間で共有されていた豊かな文化を垣間見ることができます。浮世絵を通して、江戸っ子たちを魅了し続けた江戸時代のエンターテインメントをご紹介します。