栗林隆(くりばやし・たかし/1968-)は、長崎に生まれ育ち、現在はインドネシアと日本を往復しながら活動するアーティストです。活動開始から一貫して「境界」をテーマに、ドローイングや、インスタレーションや映像などの多様なメディアを用いて身体的体験を観客にうながす作品を国内外で発表してきました。
彼の作品は、自然と人間の関わりに対する本人の深い関心から生まれてきました──展示室の中に和紙で作られた林が広がる《Wald aus Wald(林による林)》(「ネイチャーセンス展」2010、森美術館)、そして薬草による蒸気で満たされた、原子炉の形を模した構造物の中で他の鑑賞者とともに過ごす〈元気炉〉シリーズ(2020-、下山芸術の森 発電所美術館ほか)、タンカーを様々な生態系が共存する一つの場として、さらには思想や作品を運ぶプラットフォームとして捉えた《Tanker Project》(2021-)などといった作品は、いずれも私たちの認識を揺るがすような刺激に満ちています。
本展は、そうした作家の視点によって生み出された、葉山館展示室外のさまざまな空間を利用した個展となります。本来展示空間ではないスペースのために発案されたインスタレーションをはじめとして、未発表のドローイングや映像作品なども展示することで、近年ますます活躍の場を広げている作家の過去と未来の「境界=今」をご覧いただきます。[美術館サイトより]