京都高等工芸学校シリーズ第4弾は、石膏像をとりあげます。
 京都工芸繊維大学の前身校のひとつ京都高等工芸学校は、明治35年(1902)、京都の伝統産業の近代化と新しいデザインをうみだす人材育成を目的として開校しました。同校のデザイン教育の要はデッサン指導でした。伝統にとらわれない独自のデザインをうみだすための基礎能力として、実物の写生によりモノのカタチを正確にとらえることが重視されたのです。そこでモデルとして、海外から取り寄せられたのが《ミロのヴィーナス全身像》をはじめとする石膏像の数々でした。京都工芸繊維大学美術工芸資料館には、1794年開業のルーブル美術館ムラージュ工房やドイツのギプス・フォルメライ、また明治早期に東京赤坂で石膏像の製造販売を手がけた菊地鋳太郎(1859-1945)による石膏像など、開校初期に収集された11点の石膏像が残されています。これらに加え2020年には、戦後の収集品を含む40体をこえる石膏像が学内から発見されました。
 開校当時、デッサンを軸とする「画学及び画学実習」を受け持ったのは、図案科の初代教授で洋画家の浅井忠(1856-1907)でした。浅井が青年期にまなんだ洋画塾、彰技堂や日本初の美術学校として知られる工部美術学校では、海外から取り寄せた石膏像をつかったデッサン指導がおこなわれており、浅井はこうした教育のノウハウを積極的に取り入れました。
 本展では、ルーブル美術館ムラージュ工房による《ミロのヴィーナス全身像》や菊地による《ラオコン像》など京都工芸繊維大学が所蔵する石膏像を一挙に公開するとともに、京都高等工芸学校の生徒によるデッサンをあわせて展示し、当時のデッサン教育の一端をご覧いただきます。
 また、関連企画として、2/16(日)にシンポジウム「デッサンモデルとしての石膏像」を開催いたします。

◎関連企画

○シンポジウム「デッサンモデルとしての石膏像」
明治~戦前期の美術教育機関における石膏像の果たした役割について考えます。

日時:2025年2月16日(日)13:15~16:50(13:00開場)
会場:京都工芸繊維大学60周年記念館 1階
入場無料、申込不要

13:15       ご挨拶
13:20~14:20 基調講演「石膏模像小史 〜欧州から近代日本へ」
          金井直/信州大学人文学部・教授
14:20~14:50 報告「京都市立芸術大学芸術資料館の石膏像について」
          松井菜摘/京都市立芸術大学芸術資料館・学芸員
14:50~15:20 報告「京都工芸繊維大学の石膏像について」
          和田積希/京都工芸繊維大学美術工芸資料館・特任専門職(学芸員)
          休憩
15:35~16:45 ディスカッション
          司会:並木誠士/京都工芸繊維大学美術工芸資料館・館長
16:45       ご挨拶

*当日、美術工芸資料館は閉館中ですが、シンポジウム終了後に1階展示のみご覧いただけます。