小金井喜美子(こがねい・きみこ)(1870~1956)は、森家4人きょうだいの第三子として現在の島根県津和野町に生まれました。東京女子師範学校附属高等女学校(現お茶の水女子大学附属高等学校)に学んだ後、欧州文学の日本語訳を手がけ、随筆や小説、和歌を創作し、明治の女性文学者として評価されてきました。
女学校卒業を前に喜美子は、解剖学者で人類学者である小金井良精(よしきよ)(1858~1944)と結婚しました。良精は長兄・鴎外の大学の先輩、また次兄・篤次郎(とくじろう)の解剖学の教授であったという縁が喜美子の人生に小金井家という新しい世界をもたらしたといえます。結婚後は森家と小金井家を頻繁に行き来し、二つの家族の交流の要となりました。そうした中で鴎外は、兄として喜美子の学業と執筆を応援し、また結婚後には文学の世界における先輩として、家庭生活と文学活動の両立に悩む喜美子を見守り助言を与えるなど支え続けました。
本展では、喜美子を中心とした森家と小金井家の親交の様子を、喜美子の著作や鴎外ら家族の日記や書簡などの館蔵資料により紹介します。