私をなぞる輪郭は私と他を隔てるものにもなりえますが、それはどこに、どのような形であるのでしょうか。役どころや肩書によって自分を表すことは比較的容易であり、それは明確に引かれた太い輪郭線に感じられるかもしれません。しかし、それらは環境によって変化し、逆転することもしばしばです。身体に目を向けても、どこまでが私と言えるのか、輪郭がいかに曖昧であるかに気づきます。
熱したガラスに息を吹き込んだり、身体を大きく使って練ったりすることでダイナミックな作品を生み出す横山翔平(1985年岡山県生まれ)の作品は、彼の思考や身体を映し出しており、生命を内包しているような印象を与えます。弧線を重ねた絵画を展開する國久真有(1983年大阪府生まれ)が描く線は、彼女の動きの軌跡です。たびたび画面の中央に現れる空白は身体的な限界を示すとともに、人が侵すことのできない領域のようでもあります。日常で生じる感情から作品を立ち上げる矢野恵利子(1987年香川県生まれ)は、作品にあそびの要素を含ませることで、さまざまな感情をユーモラスに可視化します。身体に絵具を垂らすことで、自分が「今ここにいる」感覚を確認するという新宅加奈子(1994年大分県生まれ)は、絵具が肌の上で刻々と変化する間、それを感じ取る自身の存在を認めているのでしょう。自然や動物など他者と向き合う山下麻衣+小林直人(1976年千葉県生まれ、1974年千葉県生まれ)が行う行為は一見無意味にも思えますが、繰り返し継続される行為を目撃するうちに、自分と世界との関係がわずかに変化する気配を感じさせます。[美術館サイトより]