磯崎新が設計した原美術館ARCのギャラリーAは、杉柱4本に支えられた高さ12mの天窓から自然光が降り注ぎ、太陽の面前を雲が横切る度に光が移ろう空間です。現代美術作品に適したホワイトキューブの特徴を備えながらも自然の息遣いが感じられます。「間」という日本的な時間・空間の美意識を論じた磯崎が設計したこの空間で、「40声のモテット」、ジャネット カーディフによるサウンドインスタレーションを展観いたします。
トマス タリス(16世紀イングランド王国の作曲家、王室礼拝堂オルガン奏者)が作曲した「40声のモテット」と呼ばれる多声楽曲をもとに制作されたカーディフの同名の作品は、2001年の発表以来、ニューヨーク近代美術館(MoMA)を始め世界各地で展示、日本でも銀座メゾンエルメス フォーラム(2009年)などで紹介された彼女の初期代表作であり、その作品力は鑑賞者の心を大きく揺さぶります。 作品の形態として目の前にあるものは楕円形に立ち並ぶ40台のスピーカーのみですが、その一台一台から一人一人の声が聞こえ、徐々に歌声が重なり合い、やがて展示室は40人が今ここで歌声を響かせ合っているかのような臨場感のある場へと変化してゆきます。言葉にすればわずか数行ながら、音が構築する彫刻的空間の体験は圧倒的であり、アートが言葉ではすくいきれないものであることを実感する作品です。[美術館サイトより]