清須市はるひ美術館2025年度企画展では、写真家・城戸保(1974-)の展覧会を開催します。
城戸は美術大学で油画を専攻しますが、絵を描く中で光の現象に興味を持ったことから写真へと転向します。大判カメラのあおりの効果による表現や、撮影したフィルムをあえて感光させるなど、城戸は写真技術のしくみや制作プロセスに介入することでその可能性を模索してきました。近年はフィルムをスキャンしてデータ上でおこなう制作も取り入れています。被写体は日常的に車でドライブしながら見つけるそうで、清須市周辺の地域でもたびたび撮影をおこなっています。しかし、城戸が写真制作を通してとらえようとするのは、具体的な「もの」や「場所」ではなく、それらが存在する状況や空間自体のありようです。ものごとに付随する意味を極力取り払い、作家自身がその光景に遭遇したときの視覚体験を投影する。城戸の作品からは、何かを見ること、目の前のできごとやその変化を体感することへの喜びを受け取ることができるのではないでしょうか。
本展では、昨年より定期的に富士周辺を訪れて撮影した新作を中心にご紹介します。被写体としてはありふれた富士ですが、城戸はその象徴性をぬぐい取った普遍的な風景として提示します。写真技術の探求と日々の観察から生まれる城戸の作品をぜひお楽しみください。