2024年3月28日に、89歳で急逝された絵本作家のさとうわきこさん。絵本『みちくさ』の出版を控えていた矢先のことでした。
 さとうわきこさんは、まだ女性の絵本作家が多くはいなかった時代から第一線を走りつづけ、およそ60年にわたる活動のなかで100冊以上もの絵本を世に出しました。しかし、その道は決して平坦なものではありませんでした。幼い頃は病気がちで、友だちと遊べずにひとりぼっちでした。若くして最愛の父を亡くし、女手一つで家計を支える母の姿を見て、自立した女性として生きる覚悟をします。そして、何度も苦難を乗り越えて、絵本作家になる夢を掴みます。
 そんな「みちくさ」をしながら歩んだ人生のなかで、生きることの苦しみと喜び、人の優しさと強さ、自然の美しさを知り、物語に紡いできました。何でも洗ってしまうパワフルな『せんたくかあちゃん』や、前向きで豪快な『ばばばあちゃん』など、その明るく楽しい絵本の数々に、子どもたちをはじめ多くの人びとが励まされていることでしょう。
 本展では、『せんたくかあちゃん』シリーズの全3作や『ばばばあちゃん』シリーズの全22作など初期から晩年までに手がけた絵本の原画約210点をはじめ、絵本の仕事をする前から取り組んだ童話の原稿や挿絵、そして、最後の絵本となった『みちくさ』の原画とともに、さとうわきこさんが歩んだ道を辿ります。