本展は、現在もポーランドを拠点に活動を続け、今年90歳を迎える鴨治晃次の日本で初めての本格的な展覧会です。1960年代から今日までに制作された20点の絵画、9点の立体作品、80点のデッサン、3点のインスタレーションが展示され、鴨治の小回顧展としてポーランドのザヘンタ国立美術館とアダム・ミツキェヴィチ・インスティテュートによって企画されました。
鴨治の作品には、しばしば私的な体験を想起させる要素がみられます。例えば1950年代末のポーランドへ向かう長期間にわたる船旅で体験した空間、空気、水に関連した要素や、友人の自死という悲劇的な出来事への回帰までもが作品として表現されています。
一方、鴨治はヨーロッパの抽象画の起源や、芸術における精神性の探究にも言及しています。彼の作品には制作の反復、徹底した集中力、ミニマリズムといったスピリチュアルな側面も見ることができます。
作品は作家の生活や物事、世界の本質に触れたいという願望から生まれたものです。空間の無限性・水の性質・空気などを表現しようとする彼の取り組みは自然の本質を直感的に理解しようとする試みと言えます。[美術館サイトより]