このたび岐阜県現代陶芸美術館では、岐阜県土岐市出身、今年90歳を迎え、現在も同地を拠点に精力的に制作を続ける作家伊藤慶二の個展を開催いたします。2013年に開催した「伊藤慶二 ペインティング・クラフト・フォルム」に次ぐ当館における二度目の個展となる本展では、全館規模の展示を通じて、伊藤のボーダレスな創作活動の全貌と現在を紹介します。
伊藤慶二1935年土岐市生まれ。多治見工業高等学校を卒業後、1954年に武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)入学し、油画を専攻します。卒業後、岐阜へ戻り、岐阜県陶磁器試験場でデザインの仕事に携わった伊藤は、陶磁器デザイナーの日根野作三(1907-1984)との出会いなどを通じて、本格的に陶芸の道に入ります。クラフトの器から始まった伊藤のやきものの制作は、すぐに陶による造形、オブジェへと拡がりをみせ、軽やかに、自在に展開していきました。
多岐にわたる伊藤の創作を貫くものは、ひとの精神、生活、そして社会に対する真摯なまなざしです。寡黙ながら、確かな手触りと存在感を抱えるその作品は、私たちを取り巻く社会、日々の生活、当たり前に在るものごとの根底への思索を誘います。
本展では、作家のまなざしが伝わる「HIROSHIMA」「沈黙」「尺度」「いのり」などの代表的なシリーズ、そして新作となるインスタレーションを通じて、その足跡と、とめどない創作の現在地を紹介します。