メランコリックな表情を湛えた、しなやかで優美な女性像。可憐な少女や、愛くるしい子どもたち。描いたのは大正ロマンを代表する画家、竹久夢二(1884-1934)です。「夢二式美人」と呼ばれる美人画で一世を風靡し、時代の寵児となった夢二は、絵画の世界にとどまらないその多彩な個性と才能で、今もなお高い人気をもち続けています。

本展は、京都・嵐山にある福田美術館が所蔵し、生前の夢二と交流のあった下関の実業家・河村幸次郎氏(1901-1994)が収集したコレクションを12年ぶりに大規模に公開するものです。画家であり、詩人、デザイナーでもあった夢二の「クリエイター」としての魅力に焦点を当てながら、《長崎十二景》、《女十題》、《旅》、《青春譜》などの名作から、音楽とのコラボレーションが楽しいセノオ楽譜や中山晋平楽譜の表紙原画、文才を発揮した小説や俳句にいたるまで、夢二のすべてをご紹介いたします。

展示は、夢二の代名詞となる美人画をはじめ、雑誌の挿絵原画、楽譜の表紙デザイン、俳句、作詞、小説などの自著・他著をまじえた文学関連の装丁本や挿絵原画、そして若い女性に人気を博した千代紙、便箋や封筒などの印刷物を含めて約200点に及び、多彩な才能を発揮したクリエイターとしての夢二の魅力がつまった展覧会です。

美人画家の枠におさまりきらない、夢二の新たな一面を見つけていただければ幸いです。なお、本展は高岡市美術館開館30周年記念展の第一弾です。