古くからバラは「愛」や「美」の象徴として愛され続けてきました。生命力に満ち、美と結びつけられるバラは、現代でもありとあらゆるところに息づいています。戦後の日本では、各地に復興の願いを込めて、バラが植えられました。福山市では、「戦災で荒廃した街に潤いを与え、人々の心に和らぎを取り戻そう」として1956年から57年にかけてバラの苗木約1,000本が住民たちの手によって植えられました。今では毎年100万本のバラが咲き誇る、「ばらのまち」として知られています。

本年5月、世界バラ会連合の3年に一度の国際的な大会、世界バラ会議が本市において行われます。これを記念して、近世以降のバラのイメージの変遷を多様なアートやデザインを通じて紹介する展覧会を開催します。

本展は、西洋と日本における様々な芸術に表現されてきたバラのイメージをたどる、その質と幅広さにおいて過去に例を見ないバラの美術展です。植物図譜やヨーロッパの美術はもちろん、日本画や工芸品に加えて、いわゆる「美術」のみでない現代の視覚文化にも着目し、バラが重要な役割を演じる多様な作品を展観します。それぞれの時代や場所で生み出され、各文脈の中で変容していくイメージ、また制作者独自の解釈が付されたものなど、数百年にわたるバラのイメージを探ります。

*主要出品作家、作品:ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ、オーギュスト・ルノワール、ジョルジョ・デ・キリコ、マルク・シャガール、エミール・ガレ、平賀源内、長沢芦雪、阿部正精、平田玉蘊、葛飾北斎、歌川広重、黒田清輝、梅原龍三郎、東郷青児、池田理代子『ベルサイユのばら』原画、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』(初版本)、倉俣史朗《ミス・ブランチ》など、計131点