ギッリは測量技師としてのキャリアを積んだのち、コンセプチュアル・アーティストたちとの出会いをきっかけに、1970年代から本格的に写真家として活動を始めました。ギッリにとって写真とは、現実世界の複製ではなく、フレーミングされた「見られた」視覚的断片によって風景を作り出すための手段でした。彼はこの表現手段を通じて、通り過ぎる風景の中に現実とイメージの関係性を見出し、「在」と「不在」、外的世界と内的世界について思索を深めようとしました。
本展では、1970年代から晩年にかけてギッリが撮影したイタリアや旅先での風景、アーティストのスタジオ、自宅の室内、美術品、看板やポスター、窓や鏡に映る風景など、多様な視覚的断片によって構成された風景表現を紹介します。あわせて、ギッリの活動を語るうえで欠かせない存在であり、自身もグラフィック・デザイナーとして活動した妻パオラ・ボルゴンゾーニ(1954-2011)の作品や資料も展示し、約20年にわたるギッリの写真に対する多角的な思索をたどります。ギッリが探求し続けた、終わりのない風景に対する解釈とその世界観に触れる機会となれば幸いです。[美術館サイトより]