昨年生誕120周年を迎えたサルバドール・ダリ(1904-1989)は、無意識の世界を表現しようとしたシュルレアリスムを代表する画家です。スペインに生まれたダリは、パリでのピカソやミロらとの出会いをきっかけにシュルレアリスム運動に参加し、ダブルイメージや精密な描写などを用いた独自の作風を確立しました。その才能は絵画にとどまらず、彫刻やオブジェ、舞台美術、宝飾デザイン、広告、映画、文筆と幅広い分野で発揮されました。中でも版画に対する愛好と造詣は深く、生涯で1600点以上の作品を残しています。そこには、柔らかい時計や松葉杖といったおなじみのイメージが登場するだけでなく、ダリの卓越したデッサン力や主題への鋭い洞察力が見て取れます。
本展では、ダリが精力的に制作を行った1960~70年代の版画を中心に、200点を超える作品により20世紀最大の奇才・ダリの不可思議な世界をご堪能いただくとともに、宮崎県立美術館が誇るシュルレアリスム・コレクションを併せて紹介します。