本展覧会では、陶芸と絵画的表現の交差に焦点を当て、アートとしての魅力を探ります。
多くの場合、陶芸作品は豊かな色調や質感で構成されています。釉薬や顔料を重ねることで表れる光沢や発色は、やきもの特有の物質的な美しさといえるでしょう。一方で、筆致や彩色、主題の選択に着目すると、油彩や素描など異分野の表現との響き合いを見いだすこともできます。ここでは、各々の作品の色やかたちやモチーフから、時にジャンルを横断して創作に挑む作者の思考や芸術観をつむぎ出すことを試みます。
タイトルにある「ピクチャレスク」とは、「絵画的な」「絵画のように美しい」といった意味を表す美術用語です。18世紀イギリスでは庭園や景観の美を示す言葉として用いられ、建築や造形の分野において、新時代の美意識を導いた概念ともされています。そうした言葉の拡がりに重ね合わせ、本展覧会では、絵付けされた陶器にとどまらず、平面と立体がダイナミックに融合した形態や、メディアを越境して表現を更新していくような造形のあり方にも注目します。
個人作家による創作陶芸の礎を築いたとされる富本憲吉やバーナード・リーチ、民藝運動を推進したことでも知られる河井寬次郎や濱田庄司に始まり、伝統的な技術を革新した陶芸家、前衛陶芸の旗手、茶陶の名手、イギリスやデンマークの作家、1960年代から80年代生まれのアーティストまで、約50名の作家が並びます。総計約120作品による新たな共演をお楽しみください。[美術館サイトより]