この度、ホワイトストーンギャラリー銀座新館では角谷紀章と遠藤仁美による二人展『Imprinting』を開催いたします。

1993年生まれの角谷と1990年生まれの遠藤。日本の現代アートシーンで鮮烈な存在感を放つふたりは、ともに昨年のホワイトストーン銀座における展示で絶賛を博し (月刊『アートコレクターズ/完売作家2025』掲載)、今展が初の顔合わせとなる。

角谷はスマートフォンが捉えた日常の断片を題材とし、そこにあえて不明瞭なフィルターをかけることで観る者の想像力を掻き立て、現実がはらむ深淵を浮き彫りにしてきた。従来の「カーテン」「摺りガラス」シリーズに、今年度は新シリーズ「Fog(霧)」が加わった。何気なく視覚が捉えた光景に、我々はつい都合の良い解釈を与えがちではないのか-人間の想念が介入する以前の、あるがままの実在を照らし出す。

遠藤は夢でみた風景を掘り起こし、現実と非現実の交錯を、ニュアンスに満ちた色彩と精緻なアウトラインで描く。既視感を抱かせつつも、観る者を異空間へといざなうその画風は、風景画をベースとしながらも、光や想念が様々な知覚レヴェルでせめぎ合う。最近の作品では、さらにノイズ的要素と動性を増し、複数の時空が林立するさまが見え隠れする。

ふたりが切りこむのは、現実把握の不確実性と、その茫洋たる深みである。それはまた、無意識が人間の経験にもたらす、予定外の容量の豊かさも示唆する。「刻印」や「痕跡」を意味する“imprint”。視覚や記憶が捉えた面影や印象が、たとえ残滓であれ我々に日々刻まれるのならば、人生とはそれらの集積である。タイトルを現在進行形の“Imprinting”としたのは、我々を通過する現実の数々は、命がつづく限り経験に採りこまれていくからだ。彼らの絵画もまた、様々な視線を吸収しながら、その「リアル」の幅を拡げていくに違いない。

梅雨と盛夏の狭間のひととき、才能溢れるアーティストふたりによる多様なリアルを是非ご堪能ください。