「祈り」――それは、“私たちの死”をあらかじめ荘厳すること、そこに小さな明かりをいっせいに灯すこと――
美術作家 大小島真木による新作インスタレーション

喰らい喰らわれ、与え与えられ、愛し愛され、殺め殺められる。
生まれ、育ち、老い、死に、そして再生する――、胞衣は命のすべての時間を包みこむ。
終わりはやがて訪れる。その彼方への予感を抱きながら、それでもなお繋がってゆく命へと捧げる、“祈り”の空間。

KAAT神奈川芸術劇場の劇場空間と現代美術の融合による新しい表現を展開するKAAT独自の企画シリーズ「KAAT EXHIBITION」。10回目は、“いびつに絡まりあう生命”をテーマに作品を制作している大小島真木による劇場初の個展です。
母体の胎児を包んでいる羊膜と胎盤は、日本語の古語において「胞衣(えな)」と呼ばれていました。胞衣はまた、再生のシンボルとして、そして生死を超えて私たちを包みこむこの世界そのもののメタファーとして、世界各地で信仰されてきました。本展のタイトルである「あなたの胞衣はどこに埋まっていますか?」は、メキシコの先住民セリ族が出身地を尋ねるときに用いる慣用句。胞衣とは、私たちがかつていた場所、そしてまた、やがて還りゆく場所でもあります。
本展では会場全体を巨大な胞衣に見立て、その内奥に「祈り」の場を立ち上げています。「祈り」――それは、“私たちの死”をあらかじめ荘厳すること、そこに小さな明かりをいっせいに灯すこと―― 大小島はそう考えています。