足利市を拠点に活動する菊地武彦(1960-)は1990年代より絵の始まりである「線を引くこと」をテーマに制作を行ってきました。初期の《線の気韻》シリーズでは、垂直線の重なりが凜とした緊張感を生み出した大自然を彷彿とさせる画面をつくり、《土の記憶》では、偶然できたかたちに寄り添うことを作品の意図としました。さらに2010年代の《線の形象》では、線を引くことで現れる形態やイメージを肯定的に捉える試みをし、近作の《喫水線》では、余白と線の関係を問いながら、伸びやかな身体性に立ち返った制作を展開しています。 また菊地は、独自に研究した岩絵具やメディウムによる、日本画で使われる材料をベースにした独特な質感の画面をつくり上げ、そうして表される、様々な輝きを放つ物質感のある画面も、作品の魅力の一つに挙げられます。 本展では、菊地武彦の作品を初期から現在までたどる、美術館での初の大規模個展であるとともに、今度の展開を予見させる最新作品を合わせて展示することで、表現の全貌に迫ります。[美術館サイトより]