明治20年(1887)創業の便利堂は、明治38年(1905)のコロタイプ工房開設と同時に専属カメラマンを擁し、当初は京都の名所や社寺の景観を主に撮影していましたが、明治40年に絵はがき用に法隆寺の仏像をはじめとする宝物を撮影したことを皮切りに、これ以降多くの社寺の宝物図録や博物館の展覧会図録用に文化財撮影及びコロタイプ印刷を行ってきました。この文化財撮影の歴史のなかでも、便利堂はもちろん、日本の撮影史としても最も重要なものの一つが、昭和10(1935)年に便利堂が撮影した法隆寺金堂壁画です。
原寸大モノクロ写真、赤外線写真、4色分解写真など、当時考え得る各種の撮影方法により高い技術で撮影された写真原版は、その後昭和24年(1949)に金堂の火災によって壁画が焼損してしまったこともあり、当時の様子を伝える唯一無二の存在として高く評価され、平成27年(2015)に国の重要文化財に指定されました。本展は今年がこの撮影から90周年を迎えたことを記念して当時製作されたコロタイプ原寸大複製全12面と関連資料を一堂に展観するものです。複製は、可能な限り実際の金堂内と同じ配置となっております。荘厳な空間でぜひご鑑賞くださいませ。会期は2025年11月8日(土)まで。