東京画廊+BTAP では、2025 年8 月23 日(土)より、瀧本光國による個展「そこにあるものがいつのものなのか」を開催いたします。2002 年の第1 回から、今回で5 回目の弊ギャラリーでの開催となります。本展では、長年にわたり木彫を通して時間と空間の多相性を探求してきた瀧本による、新たな展開を示す作品群を公開いたします。

瀧本光國(1952 年生まれ)は、1977 年にイタリアへ渡り、彫刻家・豊福知徳に師事。以降45年以上にわたり、木彫を中心に独自の造形表現を追求してきました。仏像修復の専門家としての活動を背景に、古材や伝統技法への深い理解を持ちつつ、絵画的イメージや記憶の残像など流動体や不確定なものを立体風景として木彫表現する試みを続けています。昨年、北九州市立美術館で開催された「瀧本光國ー水ー」展はその高度な木彫技術と彫刻観が高く評価されました。

本展では、平安〜鎌倉期の白描絵巻《鳥獣人物戯画》を起点とし、古今東西のさまざまな要素を取り込みながら、彫刻として展開した新作群を展示いたします。白描ならではの流動性や、絵巻物が持つ時間の推移を、彫刻という静的な形式の中にいかに取り込むかという挑戦が試みられています。一部の作品では、法隆寺の古材や、瀧本がミラノで最初に制作した青海波の模様なども用いられ、素材そのものが持つ歴史性も作品の一部として立ち現れます。また、作家が長年取り組んできたシリーズ「瀧」や「雲烟」の新作も発表予定です。水や雲といった絶えず変化し続ける存在を、木彫という静的な素材によって捉えようとする試みは、観る者に対して、物質と身体、時間と記憶の関係性をあらためて問い直す契機となることでしょう。

本展では、過去と現在、素材と表現との対話から生まれる「相」の世界を、ぜひ会場にてご体感ください。