「辻晉堂の世界03」では、戦後、京都に移住してからの制作になる作品群を紹介します。
辻は1949年に京都市立美術専門学校(現・市立芸術大学)に着任し、教育の上でも自身の制作の上でも「モデルなしの手法」を実践し、作品は抽象性を強めていきました。京都の陶芸文化に触れたことに加え、同僚の陶芸家・八木一夫との交流のなかで、陶彫の制作を主軸に据えるようになり、大型の作品によって国際的にその名を知られる存在となります。一方晩年には打って変わって、自宅の電気窯で粘土細工風の小品を多く手がけています。素材と対話し続けた彫刻家の多岐にわたる表現に触れていただきたいと思います。

 一方、「アジアの染織02」でご紹介するのは、インドやインドネシアのいわゆる「後染め」の布資料で、木版捺染や絞り染め、ロウケツ染めといった技法が駆使された、カラフルで細かい文様が特徴の布となっています。
コレクターとしての岡村吉右衛門の審美眼と、彼の熱心な研究態度が結実するかたちで集められたアジアの貴重な古布が醸し出す美をお楽しみください。