[ステートメント]
ペトリコールとは、雨の後に漂う独特の匂いで、ギリシャ語で「石のエッセンス」を意味します。

雨が降るたびに思い出す正体不明のあの香りは、古いアルバムを見返すときの旅情に似ていて、どこか悲しくもあり、楽しくもあります。

写真を撮るということは、真っ直ぐに世界を見つめ、限りなく純粋に、目に映るものに心を動かされることだと思います。

[アーティストプロフィール]
宮窪ツグミ
MIYAKUBO Tsugumi
2001年　神奈川県出身
2025年　多摩美術大学グラフィックデザイン学科 卒業予定

写真には写らない、その時の匂いや温度、感情などを視覚化する制作を行う。
写真の見え方が、撮った瞬間から見るものの心情次第で流動的に変化していることに焦点を当てた《羊水の記憶》や、写真から温度や感情を抽出するイメージで制作した《Thermograph》など、常に新たな写真表現を模索している。

その感情や、写真に内在する時間や温度、確かに存在していた目に見えないものを、表面化させたいと思いました。

今回の個展で制作した作品群は、雨上がりに香るペトリコールのように、言葉にならない形をしています。