本展のタイトルである「borderline ボーダーライン」という言葉には、「境界」「境目」という意味があると同時に、「どちらともいえない」「曖昧な」といった意味が含まれています。本展では、美術作品を作ろうとせずしてできた作品や、形状は使用用途を思わせるのにその用途がない作品、また、自分が使用するためだけに作ったものが美術作品として評価を得た作品や、使用用途を無くして作品にしてしまったものなど、用途とは何なのかを問いかけてくる作品を展示します。それらは私たちが「習って」きた美術とは全く違うと感じる方も多いでしょう。
実は私たちの身の回りにあるものは、見方を変えるだけでその形や用途、その他の要素が多分に存在していて、ただひとつのカテゴリーに収まるものではないともいえます。アートなのかクラフトなのか、またはそれ以外のものなのか──。カテゴリーに当てはめることができないもどかしさと、その境界の不明瞭さを感じ始めたとき、あなたはものの多様さを知るでしょう。そして、人が生活の中に機能性のみではない何かを追い求めているその想像力豊かな欲求を、感じずにはいられません。
アラオ多枝子(本展キュレーター/NPO法人はれたりくもったり アートディレクター)[公式サイトより]