〔展覧会概要〕
都市の片隅には、異なる背景や習わしを持つ営みが、ひとつの場所に折り重なっています。日向は、そうした場に宿る秩序を探るように、目の前の風景を淡々と写し取ってきました。
本展でも、昨年の展示「Japanese Motels」と同様、日本の風景の一特質を探求することを試みています。

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街の周縁部には、用途が曖昧な構造物や、仮のまま定着した設備が残されていることがある。倉庫の一角に取りつけられた簡易な屋根、道路に接して並ぶプレハブの店舗、空き地の隅に集められた資材や家具。これらは、あらかじめ設計された景観の一部ではないが、必要に応じて配置され、修繕や改良を繰り返しながら、時間とともに現実的な姿を獲得していく。そこには、既存の制度の中に持ち込まれた、別の生活技術が反映されている。資材の調達、配置の判断、空間の使い方には、その場に根ざした慣習とは異なる論理が見え隠れする。異なる文化的実践が、即席の方法で環境に折り合いをつけながら、徐々に土地に馴染んでいく。

文化の定着は一方向からではなく、複数の流れが交差する中で形成される。適応と維持、混在と乖離は、その過程において同時に現れる現象であり、その反覆は生活の密度を示すものである。

これらの風景は、単に場所を記録するものではない。制度や環境と向き合いながら構築された日常の実践の集積であり、記憶や労働、祈りが織り込まれている。写っているものは、完成形ではなく、進行中のものである。すなわち、1つの風景ではなく、幾つもの流れが交差した結果としての現在である。あるいは、そのような現在が一時的にとどまっている場所である。

− 日向秀史