永樂屋で昭和初期頃、年間百柄以上の手ぬぐいを制作していた「百(もも)いろ会」。その中でも昭和七年(1932)に発表された『私は昔「桃太郎」と云われてました』は、とりわけ人気を集めた作品です。一見すると猫のようにも見えますが、実はモチーフは「犬」。足元には猿と雉、背には歌舞伎の隈取りを施した桃太郎を乗せた犬が大きく描かれています。縁起の良さとユーモアを併せ持つこのデザインは、時代を超えて多くの人々に親しまれてきました。今展ではこの『モモタロウ』にまつわるデザインを中心に紹介します。ニッポン画家・山本太郎氏も、この題材をもとに新たな作品を制作。原画やスケッチなど、制作過程の資料も併せて展示します。また初代細辻伊兵衛と親交のあった大石内蔵助にちなむ「忠臣蔵」意匠の手ぬぐいや、昭和十年(1935)に制作された「京の年中行事シリーズ」も紹介します。こちらは、十世細辻伊兵衛の依頼により画家・中島荘陽氏が京都の年中行事を後世に伝えるために描いた十二ヶ月の図案を、当時手ぬぐいに染色し、発表したものです。今回は現当主・十四世細辻伊兵衛が、その復刻版を屏風に仕立てた作品を展示いたします。
2階展示室では創業410周年を記念して永樂屋が新たに制作した手描き京友禅スカーフなどを初公開。410年の歴史と新たな創造が交差する特別展を、ぜひお楽しみください。