日本で銅版画に取り組む芸術家が急速に増加するのは、1950年代に入ってからです。材料や道具、学ぶ場が限られたなかで果敢に技法を取得し、独自の表現へと昇華させた銅版画家が多くいました。当館収蔵作家の中から、そうした銅版画界の黎明期に新しい表現を求めた菅野陽(すがの よう・1919-1995)と浜田知明(はまだ ちめい・1917-2018)を紹介します。
 菅野は複雑な線と面を組み合わせた表現で「人体」に着目した作品を多く手がけるだけでなく、銅版画史の研究者としても知られる茅ヶ崎ゆかりの銅版画家です。一方、浜田は菅野よりも更に早く1950年の時点ですでに銅版画に本格的に着手し、自身の過酷な戦争体験を踏まえて発表した『初年兵哀歌』シリーズによって一躍注目されました。自分や社会への問いかけをユーモラスに表現した作品は当時から世界的に評価されています。
 本展は手探り状態であった銅版画界全体に日が差し込む直前、まさに夜明け前に活動時期が重なる2人の軌跡を辿ります。段階的に意識が高まってゆく銅版画の盛り上がりと熱気をどうぞお愉しみください。

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※展示会場は「茅ヶ崎市美術館 展示室1」となります。