中川一政(1893-1991、文化勲章受章者)は、絵画や書、陶芸など幅広い創作活動を展開しました。絵画や書の表現に共通するのは力強く生き生きとした線です。
 中川は、一筆で表現できたら再び筆を重ねる必要はないとの考えのもと、一筆一筆を大切に作品を作り上げました。絵筆や書の筆遣いを剣術の刀に重ね、最初の一太刀で勝負を決する真剣勝負の気概で描いたのです。こうした姿勢は、洋の東西を越えて見るものに伝わり、生前パリで開催された展覧会では、彼の描く油彩画の線に書道や武道の気合を見出した人もいたと伝わります。この気合が、線の力強さや生命感を生み出しているのです。
 どの一筆も、揺るぎなくそこに存在し、画や書の骨格を確かなものにしています。生涯をかけて“生きている画”を追求した中川の画を支えたのは、やり直しはないという気合が生んだ“生きた線”であるとも言えるでしょう。
 本展では、こうした生きた線の力に着目し、絵画や書、また素描や装丁原画など約80点を展観します。また、令和8年の干支「午」にちなみ、馬をモチーフとした作品も紹介します。