中川一政(1893-1991、文化勲章受章者)は、独自の画法を模索しながら97歳まで描き続けた、まさに「画をかくことは生きること」を体現した人でした。
 上手下手という概念にとらわれることなく、形が整っていることよりも「呼吸をしている画」を描くことが大事だと考えていた彼の画からは、生き生きとした生命力が感じられます。
 中川が晩年まで好んでモチーフとした向日葵は、彼のアトリエの庭に数多く植えられ、その花が咲き誇る限られた季節には、来客を拒むほど懸命に描いたそうです。こうして生まれた〈向日葵〉の画からは、彼の「かきたい」という情熱が伝わってきます。
 本展では、そうした向日葵の油彩画を中心に公開するとともに、薔薇や鉄線花、蝉や朝顔など、初夏から夏のモチーフを描いた絵画や陶芸、また本の装丁原画も紹介します。
 制作への情熱が生きる原動力であった中川の姿勢に、作品をとおして触れみてはいかがでしょうか。