三男二女に恵まれた森鴎外は子煩悩でした。次男・不律(ふりつ、1907~1908)は幼いうちに世を去りますが、長男・於菟(おと、1890~1967)、長女・茉莉(まり、1903~1987)、次女・杏奴(あんぬ、1909~1998)、三男・類(るい、1911~1991)は、鴎外の深い愛情に包まれて成長しました。1922(大正11)年に鴎外が60歳で死去した後、4人は父・鴎外への思いを胸に、自らの人生を歩んでいきます。
昭和に入ると、鴎外に関する随筆の執筆依頼が舞い込むようになり、4人はそれぞれの言葉で、文学者でも陸軍軍医でもない、愛する「パッパ」(家族が呼んだ愛称)を語り始めます。また、環境の変化やアジア太平洋戦争を乗り越え、鴎外遺品(愛用品、日記、原稿、書簡など)の継承に努めます。1962(昭和37)年に於菟自らが、2006(平成18)年には杏奴のご遺族が文京区に寄贈した遺品の数々は、当館所蔵資料の核となりました。
本展では、子どもたちの随筆に見える父親としての鴎外を紹介します。そして、於菟と杏奴から受け継いだ館蔵の鴎外遺品を、子どもたちの回想と共に展覧します。於菟、茉莉、杏奴、類が語り伝えてきた「パッパ」への思いをご覧ください。