当館創設者の熊谷榧(1929-2022)は、92年間の生涯で貼り絵、油絵、彫刻、陶芸という幅広いジャンルで創作活動を展開しました。

少女時代を太平洋戦争の混乱期に過ごした熊谷榧は、次第に「実生活に必要な食料や科学技術以外はすべて不必要である。絵とか音楽とか、すべてそういったものは、食い足りた上でのことだ」という考えを抱くようになり、幼い頃から好きだった絵から離れるようになりました。ですが戦後、友人と共に訪れた上高地で穂高の雪景色の美しさを目の当たりにし、そこから山の魅力に取りつかれた榧は、そんな山での風景を形に残したいという衝動に駆られるようになります。

初期は自身で染色したわら半紙を使った貼り絵を制作しますが、退色の激しさから次第に堅牢な油絵へと転向してゆき、その後晩年まで数多くの油彩画を描きました。

父・熊谷守一が没した翌年1978年(当時榧49歳)から陶芸、彫刻を始め、2001年(当時榧72歳)には石彫にも取り組みました。当館入口に設置されている石像「いねむるモリ」は父・熊谷守一の姿を熊谷榧が彫ったものです。

晩年、熊谷榧が自身の人生を振り返り言い残した 「私の人生は造って造って造りまくったとしか言いようがない」 という言葉通り、平面作品では貼り絵、油彩、水彩、クロッキー、立体作品ではブロンズ、石像、テラコッタ、陶器(陶絵)と、多彩な作品を数多く残しています。

本展ではその多様な作品から、精力的な熊谷榧の創作活動の一端をご紹介いたします。