童画家・茂田井武(1908–1956)は、宮沢賢治『セロひきのゴーシュ』(1956年)をはじめ、戦後の児童雑誌の装丁や挿絵を通して“夢”の世界を描いた画家です。その詩情豊かな筆致から生まれた絵は「物語る絵」とも呼ばれます。今年、没後70年を迎えます。
1930年、21歳でシベリア鉄道に乗り単身パリへ渡った茂田井は、働きながら描き、およそ100点を一冊の画帖『ton paris』にまとめました。パリ時代に制作した三冊の画帖のうち、本作は全頁が良好に残る貴重なものです。水彩や色鉛筆で描かれた画面には、若き茂田井が見た街や人々が、やわらかな色調と温かなまなざしで綴られています。
本展では、『ton paris』に光をあて、同時代にパリで創作した画家たちの作品とともに、彼らが見た「パリ」をあらためてご覧いただきます。