明治期から現代まで、日本人画家にとってフランスの首都パリは憧憬の的であり続けました。海路や陸路を使い何日もかけてたどり着いた芸術の都は、美術を志すその眼に新鮮に映ったことでしょう。期待に胸を膨らませた彼らは、独自の表現を探求するため、同時期に滞在した芸術家たちと切磋琢磨し、時にはルノワールやマティスといった画家の助言を受けながら、制作に励みました。
技術の習得や表現の探求において重要なのは「見ること」や「感じること」であることは言うまでもありません。ルーヴル美術館をはじめとする現地のパリ美術館やギャラリーは、彼らに大きな刺激を与えました。さらに、異国の風景が見せる多様な表情は画家の心に深く刻まれ、表現の幅を広げる大きな景気のひとつとなったようです。
第1 回の文部省留学生として留学を果たした岡田三郎助をはじめ、パステル画による「色の速写」の可能性を探求した矢崎千代二、フォーヴィスムやキュビスムなどの新運動を吸収した川島理一郎、エコールド・パリを代表する藤田嗣治を師とし「エビハラブルー」を生み出した海老原喜之助、生涯の大半をフランスで過ごし、ル・サロンにて日本人初の金賞を受賞した平賀亀祐、佐伯祐三や外国人画家たちとの交流が刺激となって多様な展開を見せた川口軌外など、」戦前戦後を通じて多くの画家が新しい表現を求めてフランスへと渡りました。
今回は当ミュージアムのコレクションより同地に過ごした日本人画家による風景画を中心にご紹介します。海を渡った日本人画家たちは、初めて触れる文化や風景、心に刻んだ情景をどのように描き出したのでしょうか。 そのまなざしを体感すると共に、画家独自の表現を紹介します。異国の地だからこそひらかれたであろうそれぞれの画家のまなざしを、絵画の世界でお楽しみください。