2019年09月01日号
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フォーカス

ル・コルビュジエの現代性 生誕125周年記念イベント巡り

木村浩之

2012年12月01日号

 1887年。明治20年。125年前。日本では、ヤマハがオルガン製作会社として創立。東京藝術大学創立。日本帝国憲法発布(1888年)。欧米では、エッフェル塔の建設開始(1889年完成)、狂犬病ワクチン等で知られるパスツール研究所開設、「グラモフォン」の特許、ダイムラーによるガソリン自動車開発。豊かで希望に満ちた時代が始まる歓喜に包まれていた、そんなときに、シャルル=エドワール・ジャンヌレ、後の「ル・コルビュジエ」は生まれた。今年その生誕125周年記念イベントが世界中で行なわれている。


ラ・ショー=ド=フォン美術館で開催された「ル・コルビュジエ 直角の詩」展のオープニングに訪れるル・コルビュジエ(1957年)
Photographie Fernand Perret © Fondation Le Corbusier-ProLitteris / Bibliothèque de la Ville, La Chaux-de-Fonds


近現代の芸術家などを多く起用しているスイスフラン紙幣の10フラン(約800円相当)の図柄はル・コルビュジエだ。採用されているプロジェクトはスイス国内のものではなくインド・チャンディガールのものだ。アルチュール・オネゲル(20フラン、作曲家)、アルベルト・ジャコメッティ(100フラン、アーティスト)、ヤーコプ・ブルクハルト(1,000フラン、歴史家)などとともに1990年代後半頃から導入された紙幣デザインのひとつだ。建築家としては以前にも100フランにボッロミーニが起用されていた。2013年頃より人物像の載らない新紙幣デザインが導入される予定となっており、それに伴いル・コルビュジエ10フランも姿を消してしまう。

ル・コルビュジエの始まり

 そのイベントの中心地は、彼の生まれ故郷であるスイスのラ・ショー=ド=フォンだ。スイス西端、フランスとの国境近くに位置する町である。付近一帯はジュラ山脈の中腹にあり、町はなだらかな丘陵地帯の谷間に沿ってやや細長い形状でひろがる。フランス東部からスイス西部にかけて連なるジュラ山脈は、恐竜の時代ともよばれる地質時代「ジュラ紀」の名称のもとになっている(映画で有名になった『ジュラシック・パーク』の名称も、このジュラ紀からきている)。時計産業で栄えていたこの町は、1794年の大火事の後、グリッド状の都市計画にて再生する。1867年にカール・マルクスが「資本論 第一部」において工場都市と呼んで取り上げたのも、この町だ。シャルル=エドワール・ジャンヌレはそんな近代的な環境に生まれ、育ち、装飾美術学校に通った。ちなみに、ラ・ショー=ド=フォンは近郊の町ル・ロックルとともに、2009年、ユネスコ世界遺産(文化遺産、「工業時代を代表する無比の証」)に指定されている。
 現在はフランス語圏、人口4万人弱だが、ル・コルビュジエが生まれ育った当時は人口2万人強でフランス語3分の2、ドイツ語3分の1程度のバイリンガルの環境であったことも併記しておきたい。現在の多くのスイス人同様、ル・コルビュジエもマルチ・リンガルだったと想像される。後に勤務するドイツのベーレンス事務所でも、また世界各国への旅行でも、言葉の問題はなかったのではないだろうか。
 現在、このラ・ショー=ド=フォンの町全体を挙げて、ル・コルビュジエ生誕125周年記念イベントが開催されている。

「石のことば」展

「石のことば」展 1911年(24歳頃)の東洋旅行からイタリア旅行での水彩スケッチの展示。屋根裏スペースを利用し作品数は10枚ほどと展示自体は大きなものではないが、会場はその旅行の直後にル・コルビュジエが設計したメゾン・ブランシュ(1912年、25歳頃)であり興味深い。自身の家族のために設計したこの建物の100周年記念イベントも並行して行なわれている(講演会やコンサートなど)。ちなみにメゾン・ブランシュは大規模な修復(復元)の後、2005年より一般公開されている。
会場:メゾン・ブランシュ
詳細:http://www.maisonblanche.ch/

「コンストラクション/コンポジション」展

写真家ルシアン・エルベによるル・コルビュジエの写真展(2007年にパリのル・コルビュジエ財団にて開催された展覧会の巡回)
会場:ギャルリ・アンプレッシオン
詳細:http://www.impressions.ch/data/galerie.htm

「家族の肖像──父の日記から見るル・コルビュジエ」展

ル・コルビュジエの父親の日記(1888年から1925年)を初公開。
会場:ラ・ショー=ド=フォン公立図書館
詳細:http://cdf-bibliotheques.ne.ch/ExpoLeCorbusier/


家族のポートレート。台座の上に座っているのが3歳のル・コルビュジエ。立っているのは兄のアルベール。ル・コルビュジエは母似か。1889年12月。撮影者不明
© Bibliothèque de la Ville, La Chaux-de-Fonds

「イマージュの建設──ル・コルビュジエと写真」展

プロジェクトにおいて参照したイメージ群や竣工作品の写真群の扱い方など、写真を通してル・コルビュジエを再考する。カタログ有り。英語版はフランス語オリジナルタイトルと異なり「Le Corbusier and the Power of Photography」となっている。
会場:ラ・ショー=ド=フォン美術館
詳細:http://www.chaux-de-fonds.ch/en/musees/mba/mba-expositions/actuelles/le-corbusier-et-la-photographie/


16ミリでル・コルビュジエ自身が撮影した映像。1936年、フランス大西洋岸のアルカションのビーチにて。
© Fondation Le Corbusier Paris/ProLitteris


ジョセフィン・ベイカー(中央)とともに。大西洋横断客船ルテティア上にて。1929年。南米訪問の途上だ。ちなみにパリのレビュー・ダンサーとして名を馳せた彼女のためにアドルフ・ロースが透明プールつき住宅を設計した翌年にあたる。撮影者不明
© Fondation Le Corbusier Paris/ProLitteris

「都市の体験」展

3人の若手写真家による都市ラ・ショー=ド=フォンのポートレート。2年間にわたるコミッション・ワーク。
会場:ラ・ショー=ド=フォン美術館
詳細:http://www.chaux-de-fonds.ch/en/musees/mba/mba-expositions/actuelles/l-experience-de-la-ville/

ヴィラ・トゥルク(シュオブ邸) オープンハウス(特別見学)

時計ブランドCYMA (シーマ)創立家子孫アナトル・シュオブのために建てられ(1917年)、シュオブ邸としても知られる。現在はラ・ショー=ド=フォンに本社のある時計ブランド、エベルが所有しゲストハウスとして使用されているため通常は見学不可となっている。かなり手が加えられているが、それでも空間の力強さは失われていない。
会場:ヴィラ・トゥルク
詳細:http://www.lecorbusier2012.ch/agendaEv/

シンポジウム「ル・コルビュジエ──写真的アドベンチャー」

ル・コルビュジエ財団主催のイベントで、ジャン・ルイ・コーエンやスタニスラウス・フォン・モースなどル・コルビュジエ学の専門家が集結して行なわれた(イベント終了)。
会場:Club 44
詳細:http://www.lecorbusier2012.ch/colloque/

そのほか、ル・コルビュジエ建築めぐり、ポスター展、子どもたちによる展覧会、コンサートなどさまざまな催しが行なわれている。
イベントのウエブサイト:http://www.lecorbusier2012.ch/

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