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ル・コルビュジエの現代性 生誕125周年記念イベント巡り

木村浩之

2012年12月01日号

ル・コルビュジエの時間

 ラ・ショー=ド=フォンは、多くの時計ブランドの創設の地となっている。ただ、オメガ(現在はスウォッチグループとしてビール/ビエンヌに移転)、ロレックス(後にビール/ビエンヌに移転)、モヴァド(アメリカ人に買収され、本社はアメリカに移転)など本社機能はより地の利のよい地に流出してしまっており、ラ・ショー=ド=フォンでは生産のみとなっているブランドも多いのは事実だ。
 ラ・ショー=ド=フォンにて1856年創立したジラール・ペルゴは現在も同地に居を構える伝統あるマニュファクチュールだ。ちなみに、横浜港開港翌年の1860年に、共同創設者の兄弟であったフランソワ・ペルゴが来日し、1877年脳卒中で倒れるまで日本に滞在している。日本におけるスイスウオッチの祖とされている人物であり、ジラール・ペルゴも日本に輸入された最初のスイスウオッチであった。横浜外国人墓地に、幼くして亡くなった娘と思われる墓碑の隣に埋葬されている。
 そのジラール・ペルゴがル・コルビュジエ生誕125周年記念モデルを発表している。「ル・コルビュジエ・トリオロジー」と名づけられた3モデルだ。ル・コルビュジエの装飾学校時代の懐中時計デザインに基づいた「ラ・ショー=ド=フォン」、シェーズロングを思い起こさせる牛毛革を用いた「パリ」、文字盤は実際にコンクリートをキャストして作成した「マルセイユ」と、こってりル・コルビュジエが味わえるデザインとなっている。各限定5ピース。ジラール・ペルゴは、ル・コルビュジエの「母の家」「メゾン・ブランシュ」修復のための寄付を行なっている。それにより今回のトリオロジー製作販売の権利が得られたという。
http://www.girard-perregaux.com/news/news-details-en.aspx?id=481


左から、「ラ・ショー=ド=フォン」「パリ」「マルセイユ」。日本にはシリアルナンバー3の1セットのみが輸入されており、BEST新宿本店(4階)にて見ることができる。もちろん購入も可能だ
© Girard-Perregaux

ル・コルビュジエで遊ぶ

 あのブロックおもちゃのレゴが名建築シリーズを出していることを知っている人はあまり多くないだろう。このサイトの読者のほとんども、レゴといえばカラフルだが単一のユニットでさまざまな形につくり上げていくものという認識なのではないだろうか。しかし今日のレゴは、特殊形状ピースばかりのパズルのようになっているものもあるようだ。ただつくるだけでなく、出来上がったもの(キャラクター人形など)で遊ぶ(ゲームなどとカップリングされている)ためにつくる、という目的のシフトがあるのだろう。
 そのなかで異彩を放っているのが「建築シリーズ」だ。エンパイアーステートビルやファンズワース邸(ミース・ファン・デル・ローエ設計)、落水荘(フランク・ロイド・ライト設計)、シドニーオペラハウス(ヨルン・ウツォン設計)など現在15セットあるこのシリーズの最新商品がル・コルビュジエのヴィラ・サヴォワだ。生誕125周年の誕生日10月6日の約1カ月前に発表されているようだが、意図的なのかどうかは不明だ。ただ偶然だとしてもこのル・コルビュジエ・イベントのひとつに加えておきたい。ちなみに日本では未発売のようだ。
http://architecture.lego.com/en-us/products/architect/villa-savoye/

ル・コルビュジエは挑発する

 映画『ル・コルビュジエの家』(原題は「隣の男」)。これも正確には生誕125周年にあわせて制作されたのではないが、偶然にも3年たった今年、日本で公開されている。監督・撮影:ガストン・ドゥブラット/マリアノ・コーン、アルゼンチン、2009年。アルゼンチンのクルチェット邸を舞台にしたストーリーだ。特殊な建築と、そこから生じる隣人との特殊な人間関係を描いており、ル・コルビュジエの建築を中心軸とした構成と言える。裏を返せば、ル・コルビュジエの提唱した建築タイポロジーが、決して一般解とならず、いまだに特異なものとして受け入れられていることを示している。
2012年9月15日(土)新宿K’s Cinemaを皮切りに全国8都市公開


『ル・コルビュジエの家』の一シーン。配給(株)アクション
予告編
http://www.action-inc.co.jp/corbusier/#prettyPhoto/0/

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