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他愛ない私たちの会話:Art Dubai 2013にて
松原慈
2013年04月01日号
Omar BerradaとGlobal Art Forumのテントの外で
このフェアに前に来たことある?
──一度来たよ。
何か発表しにきたの?
──2年前、Sharjah Biennalのためにプロジェクトがあって、ビエンナーレとArt Dubaiがまったく同じ一週間に開催されていたから、フェアの方にも足をのばしたんだ。
ああ、今回の私みたいな感じだったのね。私は普段フェアには行かないけど、このフェア、いろいろトークやワークショップや、特別企画もある。Markerに関わっている西アフリカから来ているギャラリーやキュレーターたちは、Art Dubaiがすっかりもてなしてくれているって言ってた。これってユニークなことだと思う? 私にはかなり特別なことに聞こえたの。
──僕はアートフェアの専門家じゃないけど、かなりユニークだと思う。ディレクターのアントニア・カーヴァーの性格によるところが大きいと思う。彼女がディレクターを務めるのは今年で3年目のはずだよ。ノン・プロフィット・プログラムをフェアっていう営利目的の環境のなかでどんどん紹介してる。今回僕がかかわったGlobal Art Forumも、主旨が、いわゆるアートフェアの一般的なトークとは全然違う。マーケットについて話すんじゃなくて、知識人たちが集まって、この地域でいまアクチュアルな問題について議論するんだ。
オマルが関わっていた部分はArt Dubaiのなかでどういう位置づけなの?
──メグミに顔を出してもらったワークショップは、Global Art ForumのなかのForum Fellows
っていうものなんだ。4人の参加者は僕が選んだ。それでArt Dubaiが彼らを招待する。Markerやアーティストへのコミッションワークもあるし、Art Dubaiは僕にとってはアートフェア以上のものだな。矛盾するものをくっつけたような恰好じゃない?
──おそらく商業ギャラリーがお金のためにここに来ていることで僕たちのやってるようなプログラムが可能になってる。でもトークとかをおまけみたいに扱わないで、重要なものとして真剣に考えてる。
そう! おもしろいのは、こっちのフォーラムやなんかが中心で、肝心のフェアの方が、だんだんその横にあるお店っていう感じに見えてくるの。おみやげ屋さんみたいに!
それでオマルのプロジェクトはどうやってスタートしたの?
──僕がディレクションしたワークショップは、今年で3回目。この地域でのアートの発展に役立つテーマに的をしぼって行なわれる。去年のテーマが批評、その前の年がキュレーション。たとえばキュレーションだったら、キュレーターが指導にあたって、この地域の4人の若いキュレーターを選んで、一緒にワークショップをする。自分の経験を伝えたり、アートフェアっていう人が集まる環境を利用して、他の人を招いて若いキュレーターたちに話をしてもらう。4日間の間にいろんな人の話を聞いて、ディスカッションして、最終的にはGlobal Art Forumでワークショップで考えた成果を発表するっていう集中セミナーなんだ。今年のテーマは翻訳だったから、ワークショップの指導者として、僕が呼ばれた。
それで、Markerの方のテーマはアフリカだった。
──Markerは、ドバイを世界のどこに位置づけるかを追求する目的で企画されてる。ドバイに住んでるUAE出身者はいま現在、たった10%なわけだし、文化的にひどく複雑な状況を抱えてる。MENA (Middle East North Africa)は、Middle East Nervous Anxietyなんて言い方で今回も討議されてたでしょう? MENASA (Middle East, North Africa, South Asia)っていうのがある種決まり文句になったけど、この地域ではさらにトランス・サハラや西アフリカとの交流も歴史的に存在していたわけで、そういうものを招き入れていく過程なんだと思う。彼らは満足しているみたいだった?
全体的に、とてもポジティヴにとらえてた。売れなくてもマイナスにならないから、みんないい機会としてプラスに考えていた。
フェアって人がブースの中に座ってアートを売る退屈な場所に思ってたの。でもそれは古いスタイルのアートフェアだって思う。よく考えたら、フェアの場には、ランダムにいろんなジャンルの人が集まるでしょう? コレクター、ギャラリーだけじゃなくて、ローカルな人とか、アーティスト、クリティック、キュレーター。集まる顔ぶれはけっこう雑然としてて予想しきれない。アーティストがフェアが退屈だって言うなら、別の視点から何かできる。作品制作の背景についてディスカッションして、その横にはお店があってね。