Art Information Archive
logo
四国エリア展覧会情報 毛利義嗣
Information珍しいキノコ舞踊団公演 「私たちの家 typeA: in a museum」

会場:高松市美術館エントランスホール
   香川県高松市紺屋町10-4
日時:1998年10月3日 19:00〜
問い合わせ先:087-823-1711


珍しいキノコ舞踊団は1990年、日本大学芸術学部に在籍していた伊藤千枝、小山洋子、山下三味子によって結成されたダンスカンパニー。今回のプログラムは彼女たちも含めて7人の女性ダンサーによって上演された。「私たちの家」は今年3月にラフォーレミュージアム原宿で発表された作品で、11月には神戸アートビレッジセンターでも上演されたが、美術館のエントランスホールというフラットで大きな空間を使ったため、劇場での公演とはかなり構成が変えられていた。キノコのダンスはいってみれば書割である。ペラペラな、つまりあくまで表層的で人工的なものであることを当然の前提として、あえてそれを演じている。例えば肉体を極限まで訓練しその動きを見せる、というような意識はそこにはない。あるのは動きのきっかけあるいは動機であり、むしろきっかけで十分、というかきっかけこそが重要なのだと彼女たちはかなり露骨に示している。リーダーである伊藤千枝が自分たちの踊りを「ダンスについてのダンス」といっているように、もちろんキノコはどのようなかたちであれ物語を語ることから撤退しようとしている。しかしさらに、何かを補完することから、あるいは何かを補完する手段としての肉体からの撤退をも試みているように思える。しかも、そういったことを伝えるには肉体的に物語るしかない、というある種矛盾した二重性を積極的に選択し、意味と動きの相互浸透的な戯れをごく無愛想に踊っている。ところで、本人は否定するかもわからないが、キノコの中で伊藤千枝の特異性がどうしても際立ってしまう。表現が不適切かもしれないが、ダンサーたちの中にあって彼女だけがアーティストだということを感じざるをえない。今回の公演でいえば、終盤、一人で歩いて出てきた彼女が軽く肩こりをほぐすような動きを見せた後そのままかけ足を始める場面、技術的には何でもないその仕草のどうしようもなく過剰なざわめきに驚かずにはいられない。というわけで、私はもっと伊藤千枝の踊りが見たい。

何故ダンス以外はおもしろいのか『珍しいキノコ舞踊団/電話をかけた、あと、転んだ』
……桜井圭介
12月10日号(1996)

topics

  しんまちボードウォークパラソルショップ

  場所:徳島県徳島市新町川遊歩道
  問い合わせ先:0866-57-0223
  URL:
http://www.iijnet.or.jp/t3/parasol


今年3月から市内中心部の遊歩道で毎週土・日に開催されている野外マーケット。直径4mのパラソル約50本の下で、飲食、物販、サービスなどいろいろなショップが店を開いている。別にアート目的のイベントではないのだが、10月31日には丸亀市猪熊弦一郎現代美術館がパラソル6本を使って「出店」した。内容は、ミュージアムショップやカフェ、オープンワークショップ、ビデオ・CD-ROM上映、マルチプル作品展示など。これは1日だけの企画だったが、人通りの多い場所に安価な経費でスペースを確保できるわけで、使い方によってはいろんな可能性がありそう。
exhibition蔡國強「文化大混浴 直島のためのプロジェクト」(開催中)

場所:Benesse Island 直島文化村
   香川県香川郡直島町琴弾地
問い合わせ先(要予約):087-892-2030/fax:087-892-2259


1996年よりJ.クネリス、D.トレムレット、R.ロング、宮島達男などのアーティストを直島に招いてコミッションワーク形式で作品を依頼してきた直島コンテンポラリーアートミュージアムの新しいプロジェクト。作品は、山に続く林を背にし、前方には瀬戸内海をのぞむ海岸に隣接した芝生の上にあり、ジャグジーバスとそれを取り囲む大小36個の奇岩で構成されている。のいう風水の考え方によれば、この作品は山から瀬戸内海に向かう「龍脈」を体験する装置であり、「気」の流れがバスに集中するように仕掛けられている。さらにバスには5種類の漢方薬が入っていて、強力なジェット水流とともに、ここに入浴する人々を癒し心身を活性化させる。「文化大混浴」は様々な人種が渦巻くニューヨークのクイーンズ美術館で97年に発表されたものだが、今回の直島バージョンでは、風水をアートとして実現したこと、また仮設ではなく永久設置するものとして制作されたことなど新しい試みがなされている。
exhibitionCreative Dance Unit 4th Stage

ダンサー:三好直美、岩田章子、水田真子 他
芸術監督:菊地純子
音楽:福西哲唯、稲見淳、川谷誠人

  会場:松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール
     愛媛県松山市湊町7-5
  日時:1998年12月5日(土)18:30開場 19:00分開演
  料金:一般2,500円/小・中学生1,500円
  問い合わせ先:089-977-1948 三好直美

クリエイティブ・ダンス・ユニット主催の第4回公演。芸術監督・振付家として東京・ニューヨークを中心に活躍する菊地純子を迎え、横浜ダンスコレクション'97での菊地作品「I・K・I」の松山バージョンと、クリエイティブ・ダンス・ユニットの作品「仮想都市」を上演。音楽はゲストの3名によるライブ演奏。
exhibition薩摩治郎八と巴里の日本人画家たち

出品作家:藤田嗣治、高野二三男、岡鹿之助、木内克 他

会場:徳島県立近代美術館
   徳島県徳島市八万町向寺山 文化の森総合公園

  会期:1998年10月17日(日)〜12月6日(日)
  開館:9:30〜17:00 休館は月曜日(11月23日を除く)、11月24日
  入場料:一般600円/高校・大学生450円/小・中学生300円
  問い合わせ先:0886-68-1088

1922年に渡仏し、私財を投じて美術や音楽、演劇などの芸術活動を後援したり、また日本人留学生のためにパリ大学国際都市に「日本館」を建設したことで知られる薩摩治郎八(1901-1976)の活動をたどる展覧会。戦前のパリに滞在していた日本人画家たちが彼の援助を受け1929年にパリとブリュッセルで開催した「仏蘭西日本美術家協会展」に焦点を当て、薩摩の遺品を手がかりにその再現が試みられている。
exhibition木の領域――江口週木彫展

会場:相生森林美術館
   徳島県那賀郡相生町横石字大板34
会期:1998年10月9日(金)〜12月6日(日)

  開館:9:30〜16:30 休館=月曜日(祝日の場合は翌日)
  入場料:一般(高校生以上)300円/小・中学生200円
  問い合わせ先:08846-2-1117

江口週は1932京都生まれ。東京芸術大学を卒業後に木彫による抽象作品を始め、現在にいたるまで木の量感と質感を生かした作品を制作し続けている彫刻家。平櫛田中賞、中原悌二郎賞等を受賞している。今回はここ10年間ほどの近作を中心に展示。美術館のロケーションを生かした企画展。
exhibitionロダン展

会場:高松市美術館
   香川県高松市紺屋町10-4
会期:1998年11月3日(火)〜12月13日(日)

  開館:9:00〜17:00(金曜日は19:00まで) 休館=月曜日
  入場料:一般900円/高校・大学生600円/小・中学生300円
  問い合わせ先:087-823-1711

開館10周年記念展。彫刻約70点、デッサン約25点、写真約25点を展示。

「彫刻にふれる――ロダン展」

展示作品のほとんどを国立ロダン美術館の協力を得て構成された「ロダン展」では、その一部ブロンズ作品について、視覚障害者を対象に直接手で触れて鑑賞するプログラムを会期中行なっている。専属のスタッフによる視覚障害者プログラムが開始され10年という経験を積んだロダン美術館からの申し出に、日本側は大変な関心を寄せた。しかし、視覚芸術を扱う美術館で視覚障害者と晴眼者が鑑賞を共有することは、このような取り組みが20年は遅れていると言われている日本においてまだまだ稀有なことであった。そのため、ロダン美術館の専門スタッフ、アレッサンドル・フランソワ氏が来日し、全国から集まった30名ほどの学芸員に対して、パリで行なわれているプログラムが2日間にわたって披露された。その詳細はとてもスペースが足りなくて他の機会に譲るしかないのだが、視覚障害者を交えた2日目には、『考える人』を含め5、6点の作品を手で鑑賞した後、その手による記憶をもとに、彼らに粘土で胸像を制作してもらったのである。アレッサンドル自身が彫刻家であることも手伝いこうした広がりが持てるのだろうが、彼はロダンの制作方法に倣って胸像制作を導いていった。そして、最後に仕上がった作品に「タイトルを」との問いかけに、ある視覚障害者の一人が「思い出」と答えた。彼女は、粘土を触った学校時代を彷彿させられたのだろうか。今「手による鑑賞」では、少なくとも1時間、視覚障害者と作品と自分に真剣に向き合うことになる。三者によって紡がれるひとときは、鑑賞の難しさに窮してしまうこともあるが、美術の強靭さに改めて気づかされる時間であることも最後に記しておきたい。(担当学芸員 毛利直子)

exhibition荻須高徳と猪熊弦一郎展(開催中)

会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
   香川県丸亀市浜町80-1
会期:1998年10月25日(日)〜12月20日(日)

  開館:10:00〜18:00 会期中無休
  入場料:一般850円/大学生600円/高校生以下無料
  問い合わせ先:0877-24-7755
  E-mail:
fvbf3270@infoweb.ne.jp
  
http://web.infoweb.ne jp/MIMOCA/

開館7周年を記念した荻須高徳(1901-1986)と猪熊弦一郎(1902-1993)の二人展。作風は互いに全く異なり、戦前のパリでの一時期以外は制作拠点も離れていたが、東京美術学校以来の長い友人としてまたライバルとしてあり続けた二人の足跡を油彩、水彩、素描など約150点でたどる展覧会。
exhibition岡田真宏展

会場:あーとらんどギャラリー
   香川県丸亀市浜町4
会期:1998年11月28日(土)〜12月20日(日)

  問い合わせ先:Tel 0877-24-0927/Fax 0877-56-1568

岡田真宏は1947年香川県生まれ。72年多摩美術大学油画科卒業後、クラクフ国際版画ビエンナーレ、リュヴリアナ国際版画ビエンナーレ、ノルウェー国際版画ビエンナーレなど多くの展覧会で活躍しているアーティスト。Collegium Artisticum in Sarajevo(旧ユーゴスラビア)、Modern Graphic Art Museum(エジプト)、ソウル国立現代美術館などにコレクションがある。今回の個展では、和紙に色鉛筆を用いた繊細な平面作品15点を展示。作品にはすべて『気の鏡』というタイトルが付けられている。
Topics

  高松市コミュニティ・カレッジ'98[芸術コース]

  会場:高松市美術館講堂
     香川県高松市紺屋町10-4
  問い合わせ先:087-823-1711


計5回のレクチャー・プログラム。今回は〈ルート・ディレクトリ――表現の「場」について〉という基調テーマのもと、9月から11月にかけて5名のアーティストや批評家が講義を行なった。内容は以下の通り。

1 村上隆(アーティスト)

 「フラットな日本にはフラットなアートがいちばん似合います」。

2 宮台真司(批評家、東京都立大学助教授)

 「自己は自己を決定できるのか? −自己決定論批判をめぐるパタン化された誤謬」

3 東浩紀(批評家)

 「記号への感情移入、あるいは仮想現実の現実性について」

4 是枝裕和(テレビディレクター、映画監督)

 「テレビから映画へ、映画からテレビへ」

5 中山ダイスケ(アーティスト)

 「僕にとっての場所。 ――丸亀&東京&ニューヨーク」

今年度内には講義内容をまとめたパンフレットを印刷する予定。興味のある方はお問い合わせを。

exhibition近代日本の美術 洋画家・日本画家たちの模索と展開

出品作家:菱田春草、速水御舟、菊池契月、浅井忠、安井曾太郎 他

会場:愛媛県美術館
   愛媛県松山市堀之内

  会期:1998年11月27日(金)〜1999年1月10日(日)9:00〜17:00
    [前期11月27〜12月13日 後期12月16日〜1月10日]
  休館:月曜日、12月29日〜1月5日
  入場料:一般800円/高校・大学生500円/小・中学生300円
  問い合わせ先:Tel 089-932-0010/Fax 089-932-0511

愛媛県美術館は、旧愛媛県立美術館と隣接する敷地に11月27日リニューアルオープンした。企画展示室、常設展示室、特別展示室、ハイビジョンギャラリー、図書コーナー、講堂、レストラン、ミュージアムショップ、託児室などを備えた、地上3階地下1階、延床面積10,920平米の規模。クロード・モネ、ピエール・ボナール、安田靫彦、中野和高、山口勝弘、など近現代の作品を所蔵する。なお旧美術館の施設も、県民ギャラリー、アトリエ、実技教室として使用。開館展「近代日本の美術」は、明治になって誕生した「洋画」「日本画」という絵画ジャンルの様々な試みと達成を多くの代表作で展観する企画展。
___________________________________________________________________top
Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1998