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北海道  吉崎元章
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exhibitionキース・へリング展

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展示風景
展示風景

展示室内売店
展示室内売店

キース・へリングといえば、1980年代のアートシーンにおけるスター的存在であったアーティストである。彼がエイズで亡くなって早10年。街なかでポスターやTシャツ、文房具などをよく見かけるので、もうあれからそんなに経っているという気があまりしない。いまさらキース・へリング?という意見もないこともないが、80年代に一世を風靡したへリングのムーヴマンを、時間を経たことで少し冷静になって見直すいい機会だと思う。昨年から、京都、倉敷、いわき、名古屋、東京と巡回している展覧会なので、すでに見た人も多いのではないだろうか。1978年頃のミニマリズム的作品から亡くなる1990年までのドローイング、ペインティング、版画、立体作品など100点を展示。また、豊富な写真やビデオなどによって、彼が一躍注目を集めた地下鉄構内の落書きや幅広い交友関係など、生活や行動そのものがアートであったことを浮き彫りにしている。
 このキース・へリング展は、これまでの他の展覧会とちがって、若い層の観覧者がやけに目立つ。特にカップルが。そして、最も特徴的なのは、グッズの販売額が飛び抜けて多いということ。一人平均で1000円以上を買っている計算になる。キース・へリングとグッズの関係――それは単なる関連商品というものではなく、彼のアートの一部である。彼が自らのオリジナル・グッズを安く大量に売る「ポップ・ショップ」をニューヨークにオープンさせたのは1986年のこと。その理由のひとつに巷に出回るニセモノ対策であるというのがおもしろい。法的手段に訴えるのではなく、ニセモノより安く大量に本物を流通させてしまおうという、彼らしい陽気なカウンターパンチなのである。またそれは、彼が有名になってからも地下鉄の落書きや公共の場での制作にこだわったように、一部のお金持ちの美術愛好家や美術館のみが作品を所有するのではなく、より多くの大衆がいつでも彼の作品を楽しめるようにしようとした彼の基本的な姿勢とも相通じるものであった。そう、グッズ販売もキース・へリングの芸術の重要な部分なのである。このためこの展覧会では、通常は会場の出口付近に配置される売店を、展示室のど真ん中にオープンさせた。ニューヨーク直輸入品やライセンス商品など80種類以上のグッズを揃えたこの展示室内売店は連日賑わいを見せ、多くの人がキースのグッズを持ち帰っている。彼らは皆、それらをいつも手元に置いて楽しんでいることだろう。キースが望んだように。
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会場:芸術の森美術館 札幌市南区芸術の森2丁目75
会期:2000年4月1日(土)〜2000年5月21日(日) 4月中の月曜のみ休館
開館時間:9:45〜17:00
入場料:一般900円/高大生450円/小中生180円
問い合わせ先:011-591-0090

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report学芸員レポート[芸術の森美術館]

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 札幌ではようやく雪が消え、美術シーンでもそろそろいろいろな動きが見られはじめた。この北の地からの発信でなにか面白いことをやりたがっている人も多いようだ。昨年度から始まった「札幌アーティスト・イン・レジデンス」により今年は6月から6人のアーティストが順次ロシア、イタリア、中国などからやってくる。9月末から10月上旬にかけては「キューバ・アート・ウィーク」が開催され、美術展、写真展、版画ワークショップ、ライブコンサート、映画上映、シンポジウムなど、キューバ関係のイベントが札幌市内各所で開催されることになっている。映画「ヴエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」で一気に関心が高まったキューバの文化が札幌に熱い風をもたらすことだろう。10月には世界100ヶ国以上による青年会議所の国際大会も開かれ、それを足がかりに将来的には国際美術展をとの話も出ている。さらに2002年のサッカー・ワールドカップに向けて建設が進んでいる札幌ドームの周囲には現代美術の作品が多数設置されるらしい。これらについては追ってくわしく紹介していきたい。
 さて、今月のメインテーマになっている「アートマネージメント」であるが、僕自身、この言葉を頻繁に見聞きし、分かっているつもりになっていたが、いざ具体的な考えを問われてみると、正直言ってそれが何なんかいまひとつつかみきれていないことに気づいた。この機会にインターネットで検索したり、関連書籍を読んでみると、どうやら芸術をいかに活性化し、どのように芸術と社会を機能的に結びつけていくかということのようである。改めて横文字で言われると新しいことのように思われるが、それならば、それぞれの地域において美術館が負っている使命そのものであり、学芸員が日頃から気にかけていることにかなり重なる。「アートマネージメント」は、美術館だけではなく、企業やさまざまな団体なども含んだことであろうが、これだけ多く取りざたされ、研修や講座が各地で開かれているのであれば、学ぶべきところも多いはず。今月のartscapeの他の記事を見てもう一度勉強しなくては。

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