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Recommendation
東京  荒木夏実
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exhibition前川知美−新作絵画

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前川知美
 油彩の色面の中から出現する軍用ヘリコプターや戦闘機。羽虫のように小さく見えているものもあれば、圧倒するように迫り来るものもある。柔らかさと硬質なイメージが創りだす不思議な浮遊感。
 女性である前川にとって「男っぽい」軍用機は、永遠に把握しきることのできない存在なのだという。それが彼女の作品にミステリアスな魅力を与えているのかもしれない。
 新鮮なヴィジョンを堪能できる展覧会である。
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会場:オオタファインアーツ
会期:2000年4月8日(土)〜5月20日(土)
問い合わせ:Tel. 03-3780-0911

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exhibitionアンディ・ウォーホル展

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展示風景

展示風景
展示風景
Bunkamura ザ・ミュージアム

 ニューヨーク在住のホセ・ムグラビ氏のコレクションを中心に約250点を集めた展覧会。「ああ、ウォーホルね」とわかったようなつもりで見に行った私だったが、その新鮮な展示方法に感激してしまった。普段のこの会場のイメージとは異なり、壁で細かく仕切らずに会場全体を見渡せるようなオープンな空間構成がなされている。またコーナーによって色鮮やかな壁が使われたり、肖像画が格子状に展示されたり、大胆で楽しいアイデアが随所に見られる。二段掛け、三段掛けもニクいほど上手くデザインされているのだ。年代ごとにまとめられた解説パネルも300字程度の無理のない分量である。
 作品の個別性よりもウォーホルという人の「全体」を、頭ではなく身体で感じることができる仕掛け作りが見事である。歴史や知識に頼らない、よりダイレクトでライブ感あふれる展示になっている。お行儀良く見るよりずっと楽しいし、それがウォーホルにはふさわしい。それにしても、ウォーホルってすごい人物。何もかもやりつくされてしまった感がある。
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会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
期間:2000年4月1日(土)〜5月21日(日)
Bunkamura HP:http://www.nihon.or.jp/bunkamura/
アンディ・ウォーホル展オフィシャルサイト:http://www.warhol-ex.com/
問い合わせ:Tel. 03-3272-8600

2001年2月まで各地を巡回:大丸ミュージアム梅田 広島市現代美術館 川村記念美術館
              名古屋市美術館 新潟市美術館


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exhibition美育−創造と継承

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「美育−創造と継承」カタログ
「美育−創造と継承」カタログ

『きりん』第7卷第9号(1954年9月)
『きりん』第7卷第9号
(1954年9月)
 先月アートスケープのカタログ紹介でも取り上げられたが、目からウロコの1冊である。昨年の12月11日から今年2月13日まで開催された展覧会に合わせて作られた同書は、戦後関西地域で展開された斬新な児童美術教育とその流れを検証したもの。
 1948年に創刊された児童詩誌『きりん』、同年吉原治良らによって創設された「阪神間童画展覧会」(後の「童美展」)など、この時代、児童のためのクリエイティブな活動が大きな盛り上がりを見せていた。そして具体美術協会のメンバー、学校教師、編集者など様々な立場の人たちが垣根を越えて活発に交流し、影響を与えあいながら教育に取り組んだのである。本書は、当時の指導者たち、教育を受けた子供たち、そして現在の指導者たちへのインタビューをもとに構成されており、『きりん』に載った子供の詩や絵も数多く紹介されている。

 このインタビューの記録が生き生きとしていてとても面白い。「子供のため」と言ってもそこには大人と子供の距離は感じられない。特に『きりん』の時代の指導者たちは、本人も無我夢中で怒濤の渦に巻き込まれていた様子が窺える。そして子供たちの詩の斬新さ、具体顔負けの絵画の躍動感には目を見張るものがある。大人とか子供とか、芸術と日常とか、そんな隔たりは全くなく、そこには何が起こるかわからない自由と希望と情熱がただみなぎっているのである。

「桃の里幼稚園」制作風景
「桃の里幼稚園」制作風景

乾美地子(深江小学校5年)の作品
乾美地子(深江小学校5年)の作品

 当時の教育を受けた子供の中には芸術家になった者もいるが、多くは「普通」の生活を送っている。『きりん』の編集に携わり後に「具体」に参加した浮田要三の言葉は印象的だ。「こどものときにそういう体験をしたことによって、いわゆる文化的なジャンルにずっと巣くって生涯を終えるなんて、そんなことを期待するほうが無理ですよ。そんな文化だったら、むしろ要らないくらいです。」潔く直裁な表現の中にはっとさせられる真理がある。狭苦しい「文化」なんて必要ない。私たちはこのことを忘れがちである。
 元「具体」のメンバーの審査によるユニークな児童画展「童美展」は、今なお芦屋市立美術博物館で毎年行われている。本書を読んでその意味を改めて知ることができた。ここまで徹底した取材を行い、様々な人の生の声を載せた書物は美術館のカタログとしては異色である。美術とか教育という範疇を超えて読み物として実に面白い。学芸員山本敦夫氏の丁寧な仕事に感服する。美術関係者のみならず多くの人に読んでもらいたい本である。

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美育−創造と継承
会期:1999年12月11日〜2000年2月13日
会場:芦屋市立美術博物館
カタログ編集・発行:芦屋市立美術博物館
問い合わせ:Tel. 0797-38-5432

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report学芸員レポート[三鷹市芸術文化センター]

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金沢
上:金沢市現代美術館建設事務局
下:「豪華粗品 !!」展会場風景

金沢市現代美術館プレ・イベント+金沢美術工芸大学美術部企画展
 
 金沢市民芸術村でハラルド・ゼーマンのレクチャーが行われた。現在建築準備中の金沢市現代美術館によるプレ・イベントである。1933年スイス生まれのゼーマンは、美術界に大きな影響を与える話題の展覧会を次々と企画してきたキュレーターで、前回と次回の二期に渡ってヴェネツィア・ビエンナーレ総合コミッショナーを務めている。
 大物キュレーター、ゼーマンの素顔はとても魅力的だ。たっぷりとたくわえた髭には貫禄があるが、笑顔は少年のように悪戯っぽく、人なつこさと包容力が感じられる。ドキドキしながら話しかけた私の緊張も、一瞬のうちに吹き飛んでしまった。学生にも市民にも、誰にでもフレンドリーに接して相手をぐっと引き寄せる彼の姿に人格と能力の大きさを見た気がした。
 レクチャーは、ゼーマンが頭角を顕わした60年代から現代までのアートの動きを網羅する興味深い内容であった。ただ、アート=革命という捉え方が、確かにボイスの時代に機能していたことはよくわかるのだが、現在同様のリアリティをもつとは思えない。そこに微妙なズレ(一種のジェネレーション・ギャップかもしれない)を感じたが、同時にこれほどまでに政治、社会、アートが密接に関わってきたヨーロッパの美術史とその解釈を私たち日本人は忘れるべきではないと思った。
 今回のレクチャーに合わせて、金沢美術工芸大学美術部の企画展「豪華粗品 !!」が同会場で開催され、学生たちの作品をゼーマンが見て回った。ゼーマンとの交流は学生にとって大きな刺激になったと思う。入場者も200名の定員をはるかに上回って300人近かった。美術館オープンに向けて地域の雰囲気が盛り上がっていく様子はとても良い。
 学芸員の黒沢伸さんに準備室のオフィスを見せていただいた。色とりどりのアイ・マックや木製のデスクがおしゃれだ。「パソコンやデスクがグレーである必要はない」という黒沢さんの言葉に大納得。ちょっとした工夫で職場の雰囲気やみんなのやる気も変わるものである。そして学芸課長が女性である長谷川祐子さんということも影響していると思うのだが、学芸課の女性がとても生き生きと働いているのが印象的だった。皆さん責任感があって、仕事がデキて、しかもチャーミング!同性ながら惚れ惚れしながらその働きぶりを眺めていた私である。女性が伸び伸びしている職場というのは、察するに慣例とかヒエラルキーとかいう非合理的なものに縛られず、誰もが意見を言える自由な雰囲気(そこには依存しあわないという厳しさも当然あるが)があるのだと思う。
 新しい美術館作りに向けられたポジティブなエネルギーを肌で感じることのできる金沢体験であった。
 
アートマネジメントについて
 アートマネジメントの意味や内容を定義することは難しいが、究極のところ、「アーティストのアイデアをオーディエンスが受け取ることのできる形にする仕事」と私は考える。いくら面白いアイデアがあっても、具体化されてオーディエンスの手に届かなければ広がっていかない。その実現のためにはお金、需要、意義、広報戦略等々あらゆる現実的要素が絡んでくる。
 コンサートや演劇などは、チケットをさばくというシビアな「興行的」要素が強いため、専属マネージャーや事務所など、マネジメントのシステムはかなり整えられている。一方、美術の分野ではマネジメントの役割はまだまだ曖昧だと思う。しかし作品の質が多様化し、必ずしも作品そのものが「商品」として機能しないケースが多くなった今日、美術を「プロジェクト」としてとらえてきちんとマネジメントする必要が高まっていると思う。それにアーティストが何から何までやる、というのは効率も良くないし、本人が疲弊してしまう。
 学芸員ももちろんアートマネージャーとしての役割を担っている。しかし、本当はファンド・レージングやPR、マーケット・リサーチの能力に長けた専門家が別に必要だと思う。アーティストと同じく、何から何まで学芸員がやらなくてはならないのが悲しいかな日本の美術館の現状だろう。

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