90年代半ば頃からだろうか、関西では美術館や画廊といった既成の空間を飛びだして、アーティストが街中で自主的に展覧会を組織する動きが活発である。樋口よう子さんを中心とする「モダンde平野」や杉山知子さんらによる「C.A.P.」はいずれもこれまで継続的に活動し、それぞれがターニング・ポイントを迎えつつあるようだ。今回紹介する「六甲アイランド WATER FRONT OPEN AIR PLAY」もそれらと同様に位置づけられるが、前者に比べると全国的な知名度は恐らくいまひとつだろう。情報戦略にやや疎かったことや、「勝手にオモロイことやりまっせ」的なノリが強いのがその一因かもしれない。また生活臭が希薄な、人工的な屋外空間を前提としているのも他の2者と異なる点である。作品には場所の文学的な意味性が入り込みにくく、ある意味で、かつての「具体」の野外展の流れを受け継ぐものといえるかもしれない。
毎年8月初旬に阪神間の人工島、六甲アイランドの南端に位置する、海辺の遊歩道を舞台に行われる野外展も、今年で第7回を迎える。個人的にはパフォーマンスが行われる初日と最終日が特に楽しみで、時おりフェリーやタンカーがのんびりと横切ったり、夕暮時に対岸の大阪湾にあかりが灯り始めるのもいい感じである。空間そのものがとにかく心地よいのだ。缶ビール片手に脳味噌が自然とウニ化し、小難しい理屈なんかスッ飛んで、全身の細胞がこの時空間を「楽しむでぇ」という体勢にどうしてもなってしまう。もっとも、たそがれることを目的に訪れるカップルにとっては、散在する奇妙なオブジェや、海面に突如ダイブする怪しげなおじさん(=堀尾貞治さん)は迷惑な存在かもしれないが。
第1回から必ずビールを飲みに、いや作品をみに訪れていて、当方にとって六甲アイランドの野外展はもはや夏の風物詩となっていた。そこに昨年、同展をオーガナイズしている作家の宮崎みよしさんから、作家選考などについて相談を持ちかけられた。若い作家に新しい風を入れてもらいたいとの趣旨で、当館の河崎課長と当方が参加してうだうだ飲み会、いや会議を重ねたのである。写真はそうして開催された昨年の会場風景である。野外はただでさえ難しいものだが、このマリン・パークは本当に手ごわい空間である。視界を遮るものが少なくすかーんと開けていて、特に垂直方向の取っ掛かりが少ないし、風が強くて設置物に対する物理的な制約がつきまとう。表現者の底力や柔軟性がもろに露見してしまい、「あっちゃー」となりかねないのである。
というわけで、今年もパワー・アップしてやります。「六甲アイランドといえば缶ビール」ということで、何やら今年はゲリラ的にバーが出現するという噂もある。そうそう、毎年オリジナルTシャツを作成しているのだが、本年は「かぱ」ちゃんのデザイン。人気赤丸急上昇中の「かぱ」ちゃんだけに、早めにゲットするのがいいかも。