logo
Recommendation
兵庫  山本淳夫
..
 

exhibition北尾博史展−森の部品−

..
ヒカリノカタチ・ヘビ
ヒカリノカタチ・ヘビ

モリノカド
モリノカド

モリノソラ
モリノソラ

机上の森
机上の森

 本展は3年前から始まった京都アートマップというイヴェントの一環でもある。画廊を回るひとの数もぐっと増えて、例年にぎやかである。
 さて、本年は北尾博史の仕事が個人的には最も興味深かった。彼ほどコンセプトと感性、そして技術力が高いレベルで拮抗している作家は類稀だと思う。その優秀さは充分理解しているつもりだったし、今回スタイルが大幅に変化したわけでもない。それでも作品に接すると既視感よりも瑞々しい新鮮さが際立っている。これが本物であろう。
 手っ取り早く定義すれば、作品は金属を中心とする様々な素材による具象彫刻である。その技量たるやすさまじいもので、植物の葉や茎の表現力は実に真に迫っている。とはいっても銅や鉄といった素材の特性を隠蔽せずに、むしろ際立たせながらそれをやってしまうのが彼のすごいところだ。単なるそっくりさんではない。あくまでも彫刻作品としての質量感が印象的である。
 ここまでなら、類似した作品を他にも思い浮かべる方もおられるだろう。彼の作品の面白いところは、独自のフィクションが必ず盛り込まれている点だ。例えば、壁から生えた鉄製の葉っぱは、スポットライトをあてると影のなかに虫食い穴が浮かび上がり、それが星座の大熊座のかたちに輝いていたりする。鉢植えの木の実は、一つ一つを外して手に取ることができるのだが、茎の先っぽには何とプロペラがついている。この架空の果実は熟するとプロペラがまわりだし、畑の上空は飛行する木の実の隊列で埋め尽くされるのだろう。このような素敵な夢想を、北尾は彫刻として具体化してしまうのだ。細部の作り込みには、我々の世代がかつて遊んだ“超合金”ロボの関節ジョイントを彷彿とさせるものもある。確かに、彼は自分がほしいおもちゃを自ら作っているようなところがあって、作品はしばしば実際に手に取って親密な対話を楽しむことが想定されている。会場芸術とは対照的なパーソナルな世界であり、作品との密接な交感を望むコレクターの心理をくすぐるのもうなずける。
 「私性」はしばしば90年代美術の特性として語られる。北尾博史にも確かにそうした側面は指摘しうるだろう。しかし彼の場合、その独特なフィクションが、単なる閉塞の域を超えて上質の詩や文学作品に匹敵する普遍性にまで昇華しているのが魅力だと、改めて確認した次第である。
..
会場:Gallery & Studio TAF
会期:2000年5月9日(火)〜28日(日)
開廊時間:12:00〜18:30 月曜日休廊
問い合わせ先:Phone&Fax.075-223-1815 Gallery&Studio TAF
〒602-0848 京都市上京区寺町今出川下ル扇町277-1 EATビル内  EZY12576@nifty.ne.jp

top

exhibition松尾藤代展−TOTAL LOSS ROOM 2000−

..
TOTAL LOSS ROOM 2000
TOTAL LOSS ROOM 2000

会場風景

会場風景
会場風景

 この2ヶ月間はそれなりに興味深い展覧会やイヴェントが少なくなかったので、どれを選択すべきか正直迷った。例えば、やなぎみわ(アート・スペース虹)の新展開は記述されるべきだと思うし、最後まで迷ったのだが、恐らく誰かが取り上げられるだろうから、お任せしようと判断した。
というわけで松尾藤代である。彼女を取り上げることにも多少のためらいはある。実は北尾博史、松尾藤代ともにわが社(芦屋市立美術博物館)のグループ展に出品してもらったことがあり、手前みそにならないかしら、という思いもなくはない。一方、そういうかたちで一度でも関わった作家が、その後もいい仕事をみせてくれるのは本当に嬉しいことだし、惜しみなく援護射撃をしたくなるのも、やはり偽らぬ心情には違いない。
 なぜ松尾なのか。彼女の認知度は、少なくとも関西ではもはや低くはないだろう。一方、その真価が簡単には伝わりにくい、あるいは誤解されやすいように感じるときもある。どちらかというと「根性」印の古いタイプの絵描きなだけに、キャッチーな要素に乏しい反面、図柄の明快さが、特に印刷などでみると逆に誤解を招きかねない。そのように抜け落ちてしまう部分を、なかなか実作に接することが難しい方々のためにも、微力ながらなんとか補いたい、とは思うのだが。
 作家が自分の体質にしっくりするモチーフや媒体に出会えるかどうかは、まず第一の関門だといえるだろう。彼女が「開口部から照射する光」をテーマとして発見したのはかれこれ10年以上前のことだそうで、以来ひたすらそれを追求しているわけだ。この種の仕事は、惰性や自己模倣に陥ることをいかに回避するかが、ひとつのポイントとなってくるだろう。現状をみるかぎり、松尾の制作態度はまるで何かに突き動かされているようで、テンションが下る気配は全く感じられない。いったい何が彼女をそうさせるのか。近年の展開を考えるうえで、内的な要因以外に、このキュービック・ギャラリーという空間にどう対処するかという問題意識も、無視することはできないだろう。本来的に、彼女の作品はこの空間と非常に相性がいい。逆にいうと「決まりすぎる」面もあるのだが、そこに安住せず、彼女は毎回さらにその上をいこうとチャレンジするのである。
 ところが今回は、100号前後のほぼ同規模の作品を中心に、並列的な展示となっていた。これまでのようにギャラリーの扉を開けたとたんに正面の大作がグッとくる、みたいな劇的な要素は意図的に薄められている。もちろんテンションの低下を意味するわけではなくて、作品個々の緊張感は相変わらずである。ただし、この秋のグループ展に向けて途方もない新作を制作中、という情報を聞くと、これらが来るべき新作に向けた序奏のようにも感じられてくる。その全貌は、福岡市美術館におけるグループ展「水晶の塔をさがして」(2000年10月7日〜11月5日)において明らかになるであろう。

..
会場:キュービック・ギャラリー
会期:1999年4月10日(月)〜4月22日(土)
開廊時間:12:00〜19:00/土曜日17:00(日祝休廊)
問い合わせ先:Phone&Fax.06-6229-2321キュービック・ギャラリー
〒541-0051大阪市中央区備後町3-1-2 アトラスビル201  
http://plaza18.mbn.or.jp/~cubic

top

report学芸員レポート[芦屋市立美術博物館]

..
1999年野外展
写真上:かぱ 下:浜田真由美
野外展風景 1999年8月

 90年代半ば頃からだろうか、関西では美術館や画廊といった既成の空間を飛びだして、アーティストが街中で自主的に展覧会を組織する動きが活発である。樋口よう子さんを中心とする「モダンde平野」や杉山知子さんらによる「C.A.P.」はいずれもこれまで継続的に活動し、それぞれがターニング・ポイントを迎えつつあるようだ。今回紹介する「六甲アイランド WATER FRONT OPEN AIR PLAY」もそれらと同様に位置づけられるが、前者に比べると全国的な知名度は恐らくいまひとつだろう。情報戦略にやや疎かったことや、「勝手にオモロイことやりまっせ」的なノリが強いのがその一因かもしれない。また生活臭が希薄な、人工的な屋外空間を前提としているのも他の2者と異なる点である。作品には場所の文学的な意味性が入り込みにくく、ある意味で、かつての「具体」の野外展の流れを受け継ぐものといえるかもしれない。
 毎年8月初旬に阪神間の人工島、六甲アイランドの南端に位置する、海辺の遊歩道を舞台に行われる野外展も、今年で第7回を迎える。個人的にはパフォーマンスが行われる初日と最終日が特に楽しみで、時おりフェリーやタンカーがのんびりと横切ったり、夕暮時に対岸の大阪湾にあかりが灯り始めるのもいい感じである。空間そのものがとにかく心地よいのだ。缶ビール片手に脳味噌が自然とウニ化し、小難しい理屈なんかスッ飛んで、全身の細胞がこの時空間を「楽しむでぇ」という体勢にどうしてもなってしまう。もっとも、たそがれることを目的に訪れるカップルにとっては、散在する奇妙なオブジェや、海面に突如ダイブする怪しげなおじさん(=堀尾貞治さん)は迷惑な存在かもしれないが。
第1回から必ずビールを飲みに、いや作品をみに訪れていて、当方にとって六甲アイランドの野外展はもはや夏の風物詩となっていた。そこに昨年、同展をオーガナイズしている作家の宮崎みよしさんから、作家選考などについて相談を持ちかけられた。若い作家に新しい風を入れてもらいたいとの趣旨で、当館の河崎課長と当方が参加してうだうだ飲み会、いや会議を重ねたのである。写真はそうして開催された昨年の会場風景である。野外はただでさえ難しいものだが、このマリン・パークは本当に手ごわい空間である。視界を遮るものが少なくすかーんと開けていて、特に垂直方向の取っ掛かりが少ないし、風が強くて設置物に対する物理的な制約がつきまとう。表現者の底力や柔軟性がもろに露見してしまい、「あっちゃー」となりかねないのである。
 というわけで、今年もパワー・アップしてやります。「六甲アイランドといえば缶ビール」ということで、何やら今年はゲリラ的にバーが出現するという噂もある。そうそう、毎年オリジナルTシャツを作成しているのだが、本年は「かぱ」ちゃんのデザイン。人気赤丸急上昇中の「かぱ」ちゃんだけに、早めにゲットするのがいいかも。
..
第7回六甲アイランド WATER FRONT OPEN AIR PLAY−潮風・アート−
会場:六甲アイランド マリンパーク南端遊歩道(兵庫県神戸市東灘区向洋町)
会期:現代美術野外展 2000年8月5日(土)〜8月27日(日)
   ●オープニングイべント
   8月5日(土)15:30〜 ラテンフェスティバル
   17:30〜 オープニング・レセプション
   18:00〜 アートパフォーマンス
   ●クロージングイベント
   8月27日(日)16:30〜 クロージング・レセプション
   17:00〜 アートパフォーマンス
参加アーティスト
野外展:麻谷 宏/堀尾貞治/宮崎みよし/崔 石鎬/中川周士/福井恵子/安田辰雄/か ぱ/平井 勝/國府 理/上村亮太/藤原志保/坪田昌之/岡本光博/下。研/内藤絹子/劣性ウイング(順不同) パフォーマンス:浜田真由美/山下克彦/坂出達典/西島一洋/窪田 順/小池照男/黄 鋭/大西隆志/陳 式森/高谷和幸ほか(順不同)
ラテン・フェスティバル:西川 慶ほか
主催:リ・フォープチーム
助成:神戸まちづくり六甲アイランド基金/神戸市芸術文化基金/亀井純子文化基金
後援(予定):神戸市/神戸市教育委員会/神戸新交通株式会社/神戸市民文化振興財団/東灘文化協会
協賛:「潮風・アート」基金
協力:NPO リ・フォープ
問い合わせ先:リ・フォープチーム事務局 Tel.078-366-0536 Fax.078-366-0756 事務局長 宮崎みよし
〒650-0022 神戸市中央区元町通6-7-5 松尾総合ビル B1F mmiyoshi@gol.com
http://www.assistem.com/riwfoap/

top

福島
兵庫
岡山
福岡

home | art words | archive
copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1999..