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exhibition共同アトリエ「3号倉庫」オープン

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3号倉庫/安部貴住のアトリエ
3号倉庫/安部貴住のアトリエ

高田麻衣子のアトリエ
高田麻衣子のアトリエ

3号倉庫2階展示スペース
3号倉庫2階展示スペース
壁面はすべて風倉作品

オフィスとその上の成田鐘哲のアトリエ
オフィスとその上の成田鐘哲のアトリエ
 昨年12月、「福岡を拠点に意欲的に活動する若手作家に制作の場を提供」するために、福岡市中央区埠頭近くの倉庫街の一角に、倉庫の名前をそのままスペース名にした共同アトリエ「3号倉庫」がオープンした。
 倉庫は二層に仕切られ、1、2階併せて約300平方メートル。1階に個人用のアトリエ区画が三つと共同の休憩室兼オフィス、2階は展示スペース(一部個人用アトリエ)となっている。
アトリエ1期生は、「3号倉庫」の総合ディレクターを任された元「ネオ・ダダ」メンバーで大分の美術家・風倉匠さんらが、30人を越える応募者の中から選考した20代の美術家志望者4人(福岡出身または在住者)。現在彼らは共同生活のルールを模索する一方で、それぞれのアトリエ環境を整え、制作を開始しつつある。アトリエを無料で使用できる期間は1年更新で最長3年間、1年後の個展開催がそれぞれに義務付けられている。
 共同アトリエそのものは各地に存在すると思うが、この「3号倉庫」の特徴は、「憲法で文化的な国家をうたいながらも、文化や芸術をなおざりにしたさびしいかぎりの日本の現状を変えていくために」若い人の役に立つことを望んだ福岡市在住の一個人が、改装から運営にいたるまですべての経費を匿名で支援している点にある。そして、この篤志家の思いを、画廊主やベテラン美術家や大学教員らのグループがコンセプトづくりから、場所探し、改装、公募、審査、運営などのさまざまな段取りをボランティアで受け持ち、わずか半年ほどで共同アトリエ「3号倉庫」として形にした点にある。
 有名な作家が育たなくてもいい、そこで一生懸命絵を描いてくれたらそれでいいと、篤志家は見返りを一切期待していない。10年以上の運営が可能な私財を投じる予定ながらも、アトリエ1期生の前にすら顔を見せないという徹底した謎の「あしながおじさん」ぶりだ。その「人生の晩年を迎えていい夢を見たい」だけという気持ちは、総合ディレクターを任された風倉さんだけでなく、ボランティアで協力した多くの人たちもまた共有しているように思われる。こうした「ある文化的な意思を共有する人々」(『脱芸術/脱資本主義論』熊倉敬聡著、慶応義塾大学出版会、2000年)の自発的で緩やかなつながり、それは元気や幸せや楽しさを共有・分有するしなやかなシステムとして、これまでとは異なる視点から、新世紀の地域文化を活性化させる予感にみちている。
 風倉さんは、ディレクターといっても「3号倉庫」の若者たちを「指導するのではなく、一緒に制作したり、討論したりしながら、これからの美術のあり方を探っていきたい」と語り、大分の湯布院の自宅から、月に数回倉庫に通いながら、アトリエ内のパブリックスペースで、新作の制作を行う予定とのこと。現在展示スペースには、ピアノの部品やドアを鉛で封じ込めた、風倉さんの巨大な平面作品が展示されている。また、即興演奏集団「グループ・音楽」の元メンバーで、稀代のパフォーマーでもある風倉さんは、映像や音楽の新しい試みにも積極的にスペースを活用したいと目論んでおり、すでに呼びかけを始めている。先日は、元九州派の田部光子さんの要望を聞いた画廊主の声かけで、美術家の池田龍雄さん、熊本市美術館準備室の館長・田中幸人さんをゲストに招き、グループとしての九州派について語るトークショーも倉庫内で開催された。今のところは、年長者の元気やパワーに若者が押され気味の感もあるほどだ(やれやれ)。
「3号倉庫」という場所やシステムから、これから何が生まれ得るか。ともかくも世代を超えた楽しい、刺激的な現場として機能することを期待したい。

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共同アトリエ「3号倉庫」
場所:福岡市中央区那の津4-3-12 福岡物産
アトリエ1期生:成田鐘哲(多摩美術大学大学院修了)河口彩(東京芸術大学大学院修了)
安部貴住(九州産業大学卒業)、高田麻衣子(九州産業大学卒業)
問い合わせ:ギャラリーとわーる Tel. 092-714-3767

report学芸員レポート [福岡県立美術館]

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 新世紀おめでとうございます。年賀状をいただいた方へ、このスペースをお借りしてお礼申し上げます。遅ればせながら寒中お見舞いを近く出す予定にしておりますので、申し訳ございませんが、どうかしばらくお待ちください。
 自分は出していないくせにとやかくいうのはおこがましいのですが、いただいた年賀状を眺めると、本当にこの頃は自宅のパソコンからプリントアウトした年賀状が増えた。しかもタックシールではなく、宛名印刷で。確かに印刷所まかせではないから、これも「手作り」には違いないが、DTPの進化にともなって年賀状の個性は格段に減少した感があるなあ。絶滅寸前の「プリントごっこ」の年賀状が、妙に味わい深い版画作品に見えてきた(確かに原理は版画だ)。
 で、我が家の年賀状大賞は、最終的に画家・綿引展子さんの木版賀状に決まりました。

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